「面倒くさい大人」と思われてない? 若者と話すとき意識しておきたい「老害」と「イヤ汁」の視点。《語る快感》に浸っていないか要注意!

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これは何も、特定の属性の人だけに当てはまる話ではないと、私は思っています。

たとえば、子育てを終えた女性、ようやく手が空いてきた50代以降の人たち。あるいは、私のように子育て中でも大学院に通うなど、限られた時間的余白を最大限に活用しようとする人たち。こういう人々も「イヤ汁」が出やすい土壌を持っていると思います。

実際、大学の講義中の話ですが、20歳前後の学生が「コーヒーが好き」と話していました。横で聞いていた50代男性教授はすかさず、「どこの豆? スペシャリティ飲んでる? ラテアートは?」と、御本人が蓄積してきたであろう知識や経験を畳みかけていました。

自分の知識を“質問の形”で浴びせていく。きっと悪気はないんです。むしろ50代は、コーヒーを糸口に“わかり合えるかも”と前のめりになっている気配すら感じます。

しかし、若者側からすれば、「なんか押しつけがましいな」「知識でマウント取られてるな」と感じるかもしれません。あの空間には、まさに「イヤ汁」が充満していました。

これは、お金も時間もある程度自由になる中年以降の“あるある”です。余裕が生まれることで、特定のモノやコトに過度にのめり込みやすくなるからです。

そして、その熱量のままに、得た経験や知識を“聞かれてもいないのに”話し出してしまう。そこににじみ出る、自己顕示欲が「イヤ汁」の正体なのだと思います。

趣味や推し活、オタク的知識のような「ハマりもの」がある人ほど、注意が必要。長く生きてきた分、手に入れた知識や経験が若者より多いのは当たり前。それを「聞かれてもいないのに垂れ流してしまっていないか?」「イヤ汁になっていないか」。ここは、ちょっと自分に問い直してみるポイントですね。

本人は楽しい。でも、マニアックであればあるほど、聞いている相手、特に若者にとっては、それが「煮詰まった嫌な汁」として届いてしまう。しかもそれが、「すごいな」ではなく、「歳取ってるからね」「お金あるからでしょ」「時間があるんだろうな」といった、じんわりとした嫌味として受け取られてしまうことすらある。

だからこそ、私は若者と話すとき、「ハマっている分野」や「アディクション的趣味」の話題は、話したくても、まずは封印するようにしています。特に、その分野がニッチであればあるほど慎重に。

ハワイ旅行の話ならまだしも、「なぜウズベキスタンに行ったか」なんて話、本人は盛り上がっていても、聞いている若者からすれば完全に「イヤ汁」ですよね(遠い目)。

相手は自分としゃべりたいと思っている?

では、最後にまとめます。若者と対話をしたいなら、意識しておきたいのは、「老害」と「イヤ汁」視点。この両方に自覚的でいることです。

この2つが合わさると、「とてつもなく面倒くさい大人」になってしまう。世代が異なる若者との対話においては、彼らが私たちに「しゃべりたい」と思っているわけではない、ということを常に意識するべきです。

私たち自身が20代だった頃、わざわざ40代の大人と積極的に喋りたいと思っていたのか?と自問すれば、答えはわかりますよね?

 “語る快感”に飲まれているとき、人は相手を見失う。この一点に尽きると思います。話すことは気持ちいいんです。

自分の知ってること、経験してきたこと、言いたいこと。でも、その快感にどっぷり浸かると、相手が見えなくなる。だからこそ、私は両視点を持って、「相手が自分としゃべりたいと思っているかどうか」に敏感でいたいと思います。

私たち大人が、若者より圧倒的に持っているのは、知識や経験だけではなく、「聞ける力」です。いろんな話を聞いてきた経験値を持っている。その聞ける力で若者と向き合ったら、世代を超えた対話は、もっと温かくて豊かなものになるはずです。

尾石 晴 Voicyパーソナリティ

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おいし はる / Haru Oishi

音声メディアVoicy「学びの引き出しはるラジオ」でパーソナリティーを務める。

大学卒業後(心理学専攻)、外資系メーカーに16年勤務。転勤5回、管理職の経験あり。2020年に退職し、独立。2年間のサバティカルタイムを経て、現在は大学院博士課程(感性学)に在籍中。

(株)ポスパムの代表として、オンライン・スタジオヨガ「ポスパム」と、母と子のシェアコスメ「soin(ソワン)」の運営も行っている。

著書に『「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「やりたいこと」が次々見つかる! 自分らしく生きている人の学びの引き出し術』(KADOKAWA)など。

2013年、2016年生まれの男児2人の母。

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