「日本の漁業では小さな魚を獲らない」はウソ…? 世界の中で日本の水産業だけ「一人負け」となった"本当の理由"

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日本では「資源管理制度の不備」という、その本質的な問題を避けて報道されてしまう傾向が強くあります。このため、「海水温が高い・低い」「外国漁船のせい」「クジラが食べてしまう」「黒潮大蛇行」といった報道をよく耳にします。もちろん影響はあるにせよ、これらの要因に責任転嫁する傾向が非常に強くあります。そのため効果がある対策が進まず、一向によくならず必然的に悪化が続いているのです。

水産資源管理に関しては社会をミスリードする情報が蔓延しています。資源管理に対する正しい「教育」は喫緊な課題です。筆者は水産関係を専攻する学生に対して特別講義を行う機会があります。講義後に「これまでに習っていたことが誤りだったことがわかりました」という感想を毎年たくさんいただきます。その背景には、講義を依頼する先生方も学生たちのそうした気づきを期待していることがあります。

日本の漁業に対するよくある誤解

それでは記事に対してよく出てくる誤ったコメントを例に挙げますので、ご自身の実感と照らし合わせてみてください。

(例1)「小さな魚を狙わないのが日本の漁業」のはず

マアジ(写真:筆者提供)

実際にそうであればよいのですが実態は大きく異なります。上の写真は共に静岡県で水揚げされたマアジです。普通のサイズである大きいアジは140g。これに対して小さいアジは2~3gです。約60尾で普通のアジ1尾分です。この小さなアジを獲った網の目が非常に細かいことは言うまでもありません。静岡県ではアジの漁獲サイズの制限がありませんでした。他の数県も調べましたが制限は見当たりませんでした。

ちなみに2023年の水揚げ(主要33港・水産庁)では、マアジで23%、サバ類では53%が食用ではなく、養殖のエサなど非食用向けとなっています。ともに大きくなれば100%食用に向けられる魚なので実にもったいないです。ちなみにノルウェーではサバの99%が食用向けで、食用に向かないサバは漁業者が避けるシステムができています。

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