能力があるのに「自信がない」女性が直面する不合理な現実。《なぜ女性は自信を持てないのか?》 「出しゃばりたくない」が作る壁
レベッカは今でもBさんと話をするときは必ず事前にアポイントをとり、話すべき事柄と質問事項をリストにして準備している。こちらがフィードバックを求めるときちんと話はするが、外のクライアントとのミーティングではいつも静かで、メモを取ることのほうに注意を払っていた。
レベッカは自分の考えを気軽に口にしたりしなかった。いつも、提案のプラス面とマイナス面に関する包括的な分析を添えて文書にしていた。レベッカは常にきちんと準備をしていたし、努力家だった。
だが、それでも、AさんやBさんは、ロバートの自己主張の強さにはたびたび辟易させられたものの、彼の行動力に感銘を受けずにはいられなかった。間違えることをいとわない彼の姿勢と、ネガティブな評価をされてもやる気を失うことなく受け入れるという能力に感心していた。
レベッカは、ネガティブな評価を厳しく受け止め、時には涙で応対し、話の続きができるようになるまで、自分を立て直すためにオフィスに戻ることもあった。
Aさんは、レベッカを頼りにし、評価するようになっていたが、ふたりのうちどちらがもっと伸びるかと考えたとき、それはロバートだとわかっていた。彼のたくさんのアイデアのなかのひとつが実現に向けて動き出すのは時間の問題だった。
そうなったらすぐにロバートは本格的に動き出すだろう—。同僚たちから尊敬されることを楽しむだけで、給与を上げたり、もっと責任をもったり、もっと重要な役についたりすることを避けているレベッカを、あとに残して。
企業におけるこういった現実を目の当たりにすると、女性はときどきすべてを諦めて「私たちはこの世界には合わない」「自分たちの精神や家族にかかる負担が大きすぎる」と決めつけてしまう。
会社に残ることを決めたとしても、そのせいで私たちのエネルギーは枯渇していく。毎朝、本当はよくわかっていないし好きでもないゲームに勝とうとして、私たちはオフィス用の鎧を引っ張りだして身につけるのだ。
同じゲームのはずなのに「違う基準」
ここに、イヤな疑問がある。もしレベッカがロバートとまったく同じように振る舞っていたら、彼と同様に自分に確信をもった行動をとっていたら、彼女の上司はどう思っただろう?
たとえ上司が女性だったとしても、男性だったとしても、レベッカはあまりうまくやっていけなかっただろうということを示す、多くのエビデンスがある。
女性にとって、ここが自信を得るための大きな難所となる。
多数の研究が、女性が男性と同じようにアグレッシブに行動すると、社会的に、そして時には職業的にも重い代償を払わされることになると明らかにしている。