そこで2010年からは長らく空き家だったアトリエを一般公開。講師を招いて趣味の教室を開催したり、講演会や落語会、ギャラリーとして使うといった事業を始めた。



中野区社会福祉協議会が主催する地域の人たちの交流のきっかけづくりを目指す「まちなかサロン」にも参加、アトリエにはさまざまな人たちが出入りするようになった。
2011年には20年ローンを組んで底地を購入。2014年には中野区内の歴史的建造物の保存活動に取り組む市民団体「中野たてもの応援団」のサポートを受け、「三岸家住宅アトリエ」として国の登録有形文化財の認定も受けた。
のしかかる経済的負担
こうやって時間を追って書くと、残す方向に着々と進んでいたように思われるかもしれない。だが、アトリエは開かれ、価値は認められたものの、それ以上の道筋は見えていなかった。




購入した底地のローンに維持管理、修繕費用の負担は重く、そこに今後相続が発生したらどうなるか。
登録有形文化財になると相続税、固定資産税などの税制面の優遇措置は受けられるものの、日々劣化する建物の維持管理には誰もお金を出してはくれない。いくらアトリエでイベントを開催しても、それは十分なお金にはなっていなかった。
2010年の時点で建物はすでに築76年。雨漏り、傾きその他不具合は多く、部分的な床の貼り替えですら100万単位の費用が必要だったことを考えると、残していくためにはいくら必要か。想像もつかないほどだった。
【後編では、建物の継承がどうなったのか、今後の展望や課題などについてレポートする】

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