「斬られたほうは蔑まれて、斬ったほうが讃えられる」田沼意次の息子・田沼意知が佐野政言に斬られた理由

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怨恨の理由はどれも殺害に至るようなものではないように思うが、田沼家がもともと「佐野」という名字だったことから、「田沼家はかつて佐野家の家来筋の家だった」という思いを政言は持っていたようだ。

もしそうであれば、立場が逆転して佐野家は微禄となっている現状を受けて、我が世の春を迎える田沼親子との落差から、些細なことが引き金となってもおかしくはない。

赤穂事件を題材とした『忠臣蔵』に影響を受けた?

政言が凶行に及ぶ数年前から、赤穂事件を題材とした『仮名手本忠臣蔵』が盛んに上演されている。

主君のために吉良上野介に仇討ちをした赤穂藩浪人のストーリーに、心を動かされた観客が多かったようだ。政言もまた、その1人ではなかったか。

世間で悪名高い意知を、殿中で刃傷すれば英雄になれるかもしれない。個人的ないざこざを発端に、そんなイメージを日々膨らませているうちに、あるタイミングで実行してしまった。そんな可能性も考えられそうだ。

政言が意知を亡き者にしたことで、田沼時代は終焉へと向かっていくことになった。

【参考文献】
後藤一朗『田沼意次 その虚実』(清水書院)
藤田覚『田沼意次 御不審を蒙ること、身に覚えなし』(ミネルヴァ書房)
辻善之助『田沼時代』(岩波文庫)
松木寛『新版 蔦屋重三郎 江戸芸術の演出者』(講談社学術文庫)
鈴木俊幸『蔦屋重三郎』 (平凡社新書)
鈴木俊幸監修『蔦屋重三郎 時代を変えた江戸の本屋』(平凡社)
倉本初夫『探訪・蔦屋重三郎 天明文化をリードした出版人』(れんが書房新社)

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は『大器晩成列伝 遅咲きの人生には共通点があった!』( ディスカヴァー・トゥエンティワン ) 、『ひょんな偉人ランキング ―たまげた日本史』(さくら舎)。「東洋経済オンラインアワード」で、2021年にニューウェーブ賞、2024年にロングランヒット賞受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/

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