7人の日本人漫画家と同人誌の出版スタートアップ代表が語る、熱心なインドネシアファンの実態。グローバルに展開されるオタク市場

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だが、マイナー作品でも海外展開の可能性はあるのではないか。そう確信したのは一つの事例があったからだ。海外のYouTuberに、まだ知名度の少なかったBL作品「君は僕のお姫さま」のライセンスを提供し、ボイスコミックとして制作してもらったところ、その作品は「BOOK☆WALKER Global」(KADOKAWA傘下の株式会社ドワンゴが運営する英語圏向けの電子書籍配信サービス)で年間販売ランキング1位を獲得し、予想外の大ヒットを生み出した。

インドネシアのコミケ
DouDouDoujin サイトの作品ページ。ファンによるボイス音声でも楽しめる(筆者撮影)
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ライセンス契約の敷居を下げれば、マイナー作品でも海外展開できる、個人のファンでも日本作品の翻訳版が出せる。こうして誕生したのが、クリエイター直結のプラットフォームDouDouDoujinだ。マンガ家が自分の作品を掲載し、クリエイター自らがどんな二次利用はOKかを指定できる。ファン、特にVTuberなど配信者、インフルエンサーに使ってもらうことで作品の影響力を拡大させる。その影響力が生んだ収益は原作者に還元され、また二次創作者も分配を得られるという仕組みだ。

DouDouDoujinのようなプラットフォームが必要となるのは、マンガ家を取り巻く環境の変化も大きいと水谷代表は指摘する。現代のマンガ家は出版社に原稿を送って終わりの商売ではない。マンガ制作はもちろん、SNSの更新やファン獲得も仕事の一環になりつつある。以前は出版社の領域だった仕事をマンガ家がやらなければならなくなっているのだ。「それだったら出版権も自分で管理したほうが合理的だ」と考えている作家が増えている。

ファンの力を活用して多言語化でグローバル展開へ

DouDouDoujinの海外ユーザーはインドネシアが特に多い。それは日本人マンガ家をコミフロへ招いた実績が複数の現地メディアに取り上げられ、バズったためだ。ただ、インドネシアにとどまらずグローバル展開が目標だと水谷代表は強調する。前述したマイナーBL作品の爆発的ヒットも英語圏で起きた。原作作品のラインナップ拡充、ファンの力を活用した、多言語ローカライズの為の翻訳者コミュニティの構築によって、グローバル展開を推進していく計画だ。

衝動的に参加したコミフロだが、現地クリエイターの熱量、日本人マンガ家たちの狙い、そしてDouDouDoujinが仕掛けるユニークなビジネスまで、想定外の収穫に満ちていた。インドネシアの同人市場を「たいしたことはない」と侮っていた当初の自分が恥ずかしい。

若い人口と未開拓ジャンルの豊富さは、マンガ家にとっても、そして取材者である私にとっても、 “新たなブルー・オーシャン”だ。これをきっかけに現地グッズ展開の裏側や印刷所潜入記、インドネシア腐女子インタビューなど深掘りしていきたいので、ぜひ続報を楽しみにしてほしい!

はちこ 「現代中華オタク文化研究会」サークル主

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Hathiko

中国江蘇省出身。「現代中華オタク文化研究会」サークル主。小学生の頃、中国語吹き替え版の『キャプテン翼』で日本のアニメを知り、中学生の頃『ナルト』で同人の沼にドハマり。以来、字幕なしでアニメを見ることを目標に、日本語学科へ進学。アニメをより深く理解するには日本の文化や社会の実体験が不可欠だと考え、2011年来日。名古屋大学大学院修士課程を修了後、都内勤務。2017年にコミックマーケットで同人誌『中華オタク用語辞典』シリーズを頒布開始し、2019年に文学通信より書籍化。2023年には『SNSで学ぶ 推し活はかどる中国語』(朝日出版社)を刊行。

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