7人の日本人漫画家と同人誌の出版スタートアップ代表が語る、熱心なインドネシアファンの実態。グローバルに展開されるオタク市場

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前編でも紹介したが、コミフロでの参加者は6割が男性である。男性向けが主流の中、女性向けオリジナルBL本を持ち込んだ肝井先生は異色の存在だ。翻訳なし、日本語版の頒布というのも珍しい。少部数とはいえ、初日でほぼ完売したという。

買ってくるファンについて、「購入者はほかの先生より女性が多かったですね、みんな、きゃー!BLだー!って反応しながら本を手にとってくれました(笑)。私のファンというよりも、珍しいBLだから買ってくれたと思います」(肝井先生)。

インドネシア・イベントの熱量がすごいと聞いての参加だが、BLマンガ家だからこそインドネシアでの展開については慎重だ。

肝井先生は「インドネシアでは宗教上、商業でのBL販売がダメなのでBLを購入できる場所が即売会しかない。その為二次創作BLの参加サークルはあってもオリジナルBLは珍しく、まだオリジナルBLを好む読者が育ってないように思えました。またその他サークルの頒布物の傾向を見ても、同人誌より安価なグッズのほうが人気との印象です。市場に合わせるなら同人誌よりもグッズを展開したほうがいいのでしょうが、マンガ家としては、やっぱり本を読んでほしい」と話した。今後については、BLコンテンツにより寛容と聞くアメリカの同人誌即売会に関心を寄せている。

“過剰な”サービスを求めるインドネシアオタクたち

同人誌やポストカードなどの印刷物に加え、コミッション(有料でイラストを描いてもらうサービス。日本の即売会で言う「スケブ」)がDouDouDoujinサークルの目玉になった。初日に同人誌を完売した先生は、2日目はほぼ終日コミッション対応となった。

依頼内容の多くがVTuberや既存作品のキャラクター、あるいは依頼者自作のOC(オリジナルキャラクター)だったことに驚いた。ヤギ先生は「およそ4分の3がVTuber」と述べ、肝井先生も「男性参加者が多いぶん、萌えキャラの依頼が目立ちます」と話している。

日本的な感覚では、プロのマンガ家に他のキャラクターを描いてもらうのは失礼に感じる。矢野先生は「私たちのオリジナル同人誌よりも、商業作品をよく知っているのは当たり前でしょうから」と気にしていないようだった。

インドネシアのコミケ
作家たちに購入した同人誌にサインを入れてもらっている(筆者撮影)

他作品のコミッションをこころよく引き受ける、これは根田先生の”試行錯誤”から生まれた知恵だという。初参加時は自身のオリジナルキャラクターの色紙を頒布したが反響が薄かった。そこで「好きなキャラをどうぞ」と切り替えた途端に、依頼が一気に増えた。コミッションの料金は色紙1枚につき25万〜30万ルピア(約2250~2700円)だ。インドネシアの物価感覚では安くないが、それでも依頼が殺到する。

また、サインや写真などファンサービスへの期待が高いことも日本との違いだ。日本のオタクはあっさりしていて、作家と言葉を交わすことは少ない。コミケの”高速回転頒布”が話題になったこともあるが、列に並ぶ、購入する、即離脱、これが”美徳”とされている。

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