ただ、長屋の向こうに見えるビル群を眺めたときに、また別な思いも湧いてくる。仮にその場所から「活気」なるものが失われても、その分どこかで別の何かが生まれているのかもしれない。
要するに街の中にあるそれぞれの地域の機能が細分化され、人はその機能を選択して暮らしているわけだ。これはこれで住みやすさのひとつの現れなのかもしれない。
駅ビルがオープンした日を忘れられない
ただし、各地域で古くから商いを続けてきた側からすると、そうした変化は死活問題だ。地元で40年以上の歴史を持つ喫茶店の店長さんに話を聞いて、そのことを思い知らされた。
荒川4丁目から駅を越えて、都電荒川線に沿ってぶらぶら歩いた。線路沿いには今も古い家が並ぶ。振り向くと、巨大な駅ビルがすぐそこにある。

6月の終わり。この日は、午前中に30℃を超えた。炎天下のなか歩き疲れて、休める場所を探した。駅周りにはチェーン店がいくつかあるが、どうせなら地元の個人店を選びたい。ただ、なかなか見つからない。
日陰を選ぶようにして歩いていると、荒川線の線路の向こうに「コーヒーハウス はまゆう(荒川区町屋2-9-8)」の看板を見つけた。

平日の昼間だったが、店内は地元の客でほぼ満席だった。テーブルの上には灰皿と星占い機が置かれている。100円を入れてレバーを引くと、その日の運勢を占う小さな巻紙が出てくるあれだ。なんだか嬉しくなった。
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