窪田:普通の会社だったら捨てていたような化合物が、実は目の治療にとてもよく効く。全身性の副作用はまったくないという夢のような薬ができました。まさに予想外でした。
宮下:途中で開発をやめていたら、「失敗だった」で終わってしまうところです。
窪田:私はたとえ失敗だったとしても、「ちょっと待てよ。何かあるんじゃないか」と考えるから諦めが悪くて(笑)。
宮下:それによって、より価値があるものを見つけられる。そう考えると失敗のとらえ方も変わっていきますよね。
近視は対策が必要な“生活習慣病”
窪田:宮下先生は研究でどんなことを実現させたいと思っていますか?
宮下:私の研究は、人間とコンピュータが相互作用するヒューマンコンピュータインタラクションという大きな枠組みの中にあるので、人を幸せにすることや、人にとって心地良いこと、精神的な豊かさなどを目指しています。エレキソルトの開発にしても、単に高血圧を予防できればいいというわけではなく、やはり美味しく食べてもらうことを大切に考えて作りました。
窪田:先生とお話をしていて、食事制限をしなければならないなど、「制約がある人たちを何とかしてあげたい」という思いを感じました。
宮下:そうですね。制約があるということは、何かしら人を不幸にしてしまうものなので。それを取り除くことで、誰かを幸せにできるのではないかと思っています。窪田先生はどんな目的で研究をされているのですか?
窪田:私は眼科医なので、失明につながるような眼疾患を減らしていきたいという思いがあります。将来、目が見えなくなる人を少しでも減らしたい。近視は、緑内障や網膜剥離といった失明を引き起こす疾患になるリスクを高めることがわかっています。

全世界の人口の約半数は近視になるといわれているので、近視を抑制したり改善したりできることは、非常にインパクトが大きいと考えています。
宮下:そんなに近視人口が増えているとは……。知りませんでした。
窪田:近視は、近くを見る作業が増えたことで起こる“生活習慣病”と言えます。今や、糖尿病や脂質代謝異常症、高血圧といった生活習慣病の中でも、圧倒的に罹患率が高いのが近視なのです。だからこそ、対策が求められています。
宮下:窪田先生の話を伺って、改めて近視を予防することの重要性を実感できました。
窪田:ぜひ学生さんたちにも伝えていただけたら嬉しいです。宮下先生、この度は研究についての貴重なお話をありがとうございました。
(構成:ライター安藤梢)
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