イグ・ノーベル賞博士が明かす「新しい発想を生み出すコツ」――失敗の中にこそ成功のヒントがある

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窪田:私の専門は光生物学で、その中でも眼球後部にある網膜への光の影響について研究をしていました。光を投影する時には網膜に神経学的な刺激が与えられているのですが、それを何かに使えないかと考えたことが発明のきっかけになっています。

宮下:光による刺激をどんなふうに使ったのですか?

窪田:私の仮説では、特殊な映像を投影することによる光の刺激で目が動かせるのではないかと。目を動かすというのは、眼球後部を手前に引っ張るということです。そもそも近視になると本来まん丸な形の眼球が、どんどん奥に引っ張られて楕円形になっていくので、それを逆に手前に引っ張ることで元の形に戻せないだろうかと考えたのです。

近視は病気です クボタグラス
(出所)『近視は病気です』

こうしてメカニズムを明らかにすると、今まで誰もやらなかったのが不思議なくらいシンプルな考え方なんですけどね。

1日90分の装着で屋外活動を2時間したのと同じ効果

宮下:何でもそうですが、最初にやってみた人がすごいです。単に思い付きではなくて、近視を引き起こしている原因を突き止めて、そこから仮説を立てられていますよね。

窪田:そうですね。実際にクボタグラスをかけて、本当に眼球が動いたときには、物理的な力をかけなくてもこうして目が動くのか!と面白かったです。仮説が間違っていなかったことを証明できました。

宮下:クボタグラスをかけるとどんな効果があるのでしょうか。

窪田:近視の抑制には野外活動が効果的だというエビデンスがあるのですが、クボタグラスをかけると遠くを見ているのと同じ映像環境を再現できます。そのため1日90分装着するだけで、2時間屋外にいたのと同じ効果が期待できます。

(出所)窪田氏提供

宮下:眼科業界へのインパクトは大きかったのではないですか?

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