イグ・ノーベル賞博士が明かす「新しい発想を生み出すコツ」――失敗の中にこそ成功のヒントがある

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窪田:そうですね。成果を発表した途端に、世界中の研究者が私の論文を引用するようになったので、かなり影響があったと思います。

最近、日経ビジネスの「特許価値成長力ランキング」が発表されたのですが、私が代表を務める窪田製薬ホールディングスが28位にランクインしました。製薬企業では、アステラス製薬や第一三共などに続く、4位という快挙です。これまでの研究・開発が評価されたと思うと、非常に嬉しかったです。

予想外の結果にこそ、新しい発想のヒントがある

窪田:前回エレキソルト開発のお話をお聞きしましたが、これまでたくさんの研究をされてきたなかで失敗もありましたか?

宮下:宮下研究室から発信した論文はこれまで400本以上ありますが、いろいろなことをやってみて、山ほど失敗したなかで、うまくいったものだけが世に出ていっています(笑)。成功したものの何十倍も失敗しています。

私は何か問題が起こった時に、すごくポジティブに捉えるようにしていて。予想していた結果が出ない時ほど、「なんで?」とワクワクしてテンションが上がるんです。

窪田:「失敗は成功のもと」と言いますが、その通りですよね。私も失敗をたくさんしてきたのでよくわかります。予想していた結果しか出なかったらつまらないですし、そこからは新しい発想は生まれません。

宮下:エレキソルトの開発にしても、そもそもは味覚の受容体を刺激して味が変わるというシンプルな電気味覚実験をしているつもりだったのが、スプーンやお椀を介在して電気を流すと、もっと味に変化が起こることがわかりました。それは最初の仮説にはなかったですし、想定もしていなかったですから。

窪田:予想外の結果が出るからこそ面白い。私たちの会社で開発した薬剤の1つに、網膜疾患の進行を抑える飲み薬があるのですが、開発前は周囲から「飲み薬で目を治すなんてできるわけがない」と言われていました。全身投与の飲み薬で、わずか0.5gもないような目の組織に効く薬を作ることは現実的ではないと。

ところが私たちの研究では、目に届いたわずかな量の有効成分が網膜に蓄積することがわかったのです。

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