イグ・ノーベル賞博士が明かす「子どもの考える力を伸ばすのは『答え』ではなく、『問いの立て方』」

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窪田:私がアメリカで初等教育を受けたのはもう何十年も前のことなので、もちろん今の日本の教育とは違っていると思うのですが。ただ、子どもながらにアメリカと日本での考え方の違いにはびっくりしました。

同じことをしていても全く評価が変わってしまう。向こうでは、質問しないこと=話を聞いていない、理解していないと思われるので、それが嫌で質問していたところもあります。

宮下:そもそも日本には質問するという文化があまりないかもしれません。

どんな質問にも「グッド・クエスチョン!」

窪田:日本の大学で講義をしていても、ほとんど質問は出ませんよね。それは習慣の違いだと思います。日本人は、答えがあるかどうか分からないものに対して、「質問するのはダメだ」と抑制がかかってしまう気がします。空気が読めないと思われてしまう怖さもあるのでしょう。

ところが、アメリカだったら何でも「Good question!」と言われるので、聞きやすい。こうした文化は、小中学校からの教育で変えていくしかないのではないでしょうか。

宮下:クリエイティブな人材を育てるためには、やはり「答えがない問い」に向き合っていくことが大切ですよね。全員が研究者や発明家になる必要はありませんが、少なくともそうした人たちを一定数出すためには、全体の底上げが必要だと思います。

うちの研究室でも最初はなかなか自分でアイデアを出せない学生もいるのですが、毎日のようにディスカッションをしたり、いろいろな刺激を与えたりすることで、だんだん研究テーマを見つけられるようになっていきます。時間はかかりますが、そうした時間を設けることが大事だと思っています。

窪田:自分で「問い」を考えられる人が少しでも増えれば、そこから世の中の役に立つイノベーションが生まれていくはずですよね。

次回は、宮下先生がイグ・ノーベル賞を受賞された電気味覚の研究と、それを実用化した「エレキソルト」開発の裏話を伺っていきたいと思います。

(構成:ライター安藤梢)

宮下 芳明 明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 教授

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みやした ほうめい / Homei Miyashita

「味覚メディア」「テレテイスト」「テレイート」の概念を提唱、NTTドコモ・H2Lと共同で味覚共有技術「FEEL TECH」を開発。女優の綾瀬はるかさん主演のテレビCMで注目を集める。電気で減塩食品の塩味を強めるスプーン「エレキソルト」をキリンホールディングスと開発・販売。内閣府オープンイノベーション大賞 日本学術会議会長賞を受賞。CES2025にてイノベーションアワードを2部門で受賞。2023年にはイグ・ノーベル賞(栄養学)を受賞。著書に「13歳から挑むフロンティア思考イグ・ノーベル賞受賞者が明かす「解なき世界」を生き抜くヒント」等がある。

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窪田 良 医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

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くぼた りょう / Ryo Kubota

慶應義塾大学医学部卒業。慶應大医学部客員教授、米NASA HRP研究代表者、米シンクタンクNBR理事などを歴任。虎の門病院勤務を経て米ワシントン大学助教授。2002年創薬ベンチャー・アキュセラを創業。2016年窪田製薬ホールディングスを設立し、本社を日本に移転。アキュセラを完全子会社とし、東証マザーズに再上場。「エミクススタト塩酸塩」においてスターガルト病および糖尿病網膜症への適応を目指し、米FDAからの研究費を獲得し研究開発を進めているほか、在宅医療モニタリングデバイスや、ウェアラブル近視デバイスの研究開発を行っている。

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