放射能汚染地域からの子どもの集団疎開を求めた仮処分申し立て。その「模擬裁判」が郡山市内で開催
福島第一原発の爆発事故によって、放射性物質が降り注いだ福島県郡山市--。現在も市内の汚染レベルは深刻で、「電離放射線障害防止規則」で定められた放射線管理区域(年間の放射線量が5.2ミリシーベルトを超えるおそれがある区域。放射線業務を行う事業者は、必要のある者以外を管理区域に立ち入らせてはならないとされている)に相当する高線量の場所が市内のあちこちにある。
郡山市内の小中学校に通う児童・生徒14人が昨年6月24日、福島地裁郡山支部に申し立てたのが、「ふくしま集団疎開裁判」(教育活動差止等仮処分申立事件)。
「集団疎開により安全な場所で教育を」との訴えに対して、裁判所は、「同じ小中学校に通学するほかの児童生徒の意向を問うことなく、一律に教育活動の差し止めを求めるだけの生命身体に対する具体的に切迫した危険性があることを認めるに足りる疎明(※)はない」などとして、12月16日、原告の申し立てを却下した。 ※疎明:裁判官に確からしいと言う心証を生じさせること。
しかし、子どもの健康への懸念は払拭されておらず、原告は仙台高裁に即時抗告している。
そのさなかの3月17日、郡山市内で原告の支援者らによる「子どもを守る法廷劇」(主催:世界市民法廷実行委員会)が開演。約100人の参加者を前に、原告(子ども)および被告(郡山市)の代理人弁護士らが裁判(仮処分申立事件)を模して議論を戦わせた。
郡山市内で開催された「子どもを守る法廷劇」
原告側は、「年間に1ミリシーベルト以内と定められている公衆の年間被曝許容限度を超える地域で教育を強いられているのはおかしい」「なぜ原発事故が起きた途端に許容線量の20倍(年間20ミリシーベルト)まで被曝が許されるのか」「郡山市の汚染レベルはチェルノブイリ原発事故で設けられた移住義務ゾーンに匹敵するにもかかわらず、子どもが放置されている」などと指摘。
一方、被告側からは、「心配なら転校すればいい。(郡山市で)公教育を実施することは市に課せられた憲法上の責務だ」との反論がなされた。
これに対して、原告側は「転校の自由の確保がどれだけ困難であるかをわかっているのか。この自由は多くの子どもにとって絵に描いた餅にすぎない」と再反論した。
原告側は放射性物質を体内に取り込む「内部被曝」の危険性についても、100を上回る文献や陳述書などを基に主張したが、被告である郡山市は「(原告の指摘については)不知」「内部被曝についての主張は特にない」との発言を繰り返した。