町の病院が次々と破綻、外科医が減り手術が受けられない…現役医師が指摘する「医療の暗黒時代」

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腎臓内科の医師が突然退職し、急きょ医師を募集したが非常勤の医師1名しか雇えず、それまで通院していた透析患者はすべて他の医療機関へ移ってもらうしかなかったという。

また、数年前の話だが、都内の別の病院では、麻酔科医不足で手術ができない状態になったり、外科医不足で外科の診療をやめたりした。医師や看護師などの医療職は、前の病院で不祥事を起こしたとかでなければ引く手あまたなので、転職は簡単だ。麻酔科医に至っては、フリーランスで稼いでいる医師も多く、常勤麻酔科医が足りずに困っている病院が多いのが実態だ。

医療職種に限らず、今後はさまざまな職種で人手不足が加速する。

国が人手不足対策として打ち出しているのが、65~74歳までの元気な高齢者の活用だ。65~74歳までの健康で意欲のある高齢者が働けば労働力の人口の減少は緩やかで済むという見通しを立てている。

確かに、私自身も70代で高齢者だが、現在も病院の院長として診療を続けている。当院が新富士病院グループという医療・介護施設チェーンの一員になってからは、ほかの病院でも認知症外来を担当し、他院で治療がうまくいかなかった患者の治療にも当たっている。

65歳を過ぎても仕事を続ければ、私のように長年の経験が生かせることもあるし、心身の健康維持にもつながる。

しかし、そんな悠長なことを言っていられないほど、医療・介護の需要は大幅に上昇する。2025年以降は後期高齢者の増加は緩やかになるものの、医療・介護のニーズの高い85歳以上の高齢者の割合が2040年まで増加し続けるからだ。

2022年9月末時点の「介護保険事業状況報告」から算出された75~79歳の要介護認定率は11.9%だが、85歳以上では57.7%。長生きすればするほど要介護状態になるリスクも高まる。

当院が、高齢者向けの医療療養型や介護療養型の病院だった頃の入院患者も、ほとんどが85歳以上の人だった。85歳を超えると認知症になる人も増えるし、脳梗塞で片方の手足が麻痺したり言語障害が生じたりするお年寄りも少なくなかった。

医療・介護業界は万年人手不足

医療や介護を必要とする人は確実に増えるとみられるのに、今でも医療・介護業界は万年人手不足の状態だ。

東京の都心に近い私の病院や大学病院でさえ、看護師などを募集してもいい人材を集めるのはなかなか難しい。看護師や医師不足で閉院に追い込まれる病院もある。

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