患者をほかの病院へ転院させたほうが“得”…現役医師が指摘する「高齢者医療」の深すぎる闇

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2024年4月の診療報酬改定では、三次救急病院が、救急搬送されてきた患者について、連携しているほかの医療機関でも対応が可能と判断した場合、看護師などが同乗して転院搬送すると、「救急患者連携搬送料」としてもらえる診療報酬の点数が増える仕組みが導入された。

その点数は、救急搬送されてきた患者を入院させずに他の病院へ転院させたときが最も高く1800点。診療報酬の点数は1点当たり10円で計算するので、救急搬送された患者を病床に入れずにすぐに転院搬送すれば1万8000円の収入になる。

「よそへ行って」転院を促せば点数がつく

そのうち1~3割は、患者が自己負担額として病院に支払わなければならない。入院1日目に転院させると1200点、2日目なら800点、3日目なら600点で、転院が早いほど点数が高く設定されている。

『2030―2040年 医療の真実-下町病院長だから見える医療の末路』
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三次救急病院の集中治療室(ICU)の入院費だけでもかなり高額だが、1日だけ入院させて、「うちでみるほど重症ではないからよその病院へ行ってください」と、転院を促せばまた点数がつくわけだ。

救急病院のような急性期の病院から、亜急性期の病院や地域包括ケア病棟へ転院させることを医療界の用語で「下り搬送」と呼ぶ。

下り搬送したほうが得なのだから、今後は、三次救急病院の滞在期間はどんどん短くなり転院が加速するだろう。

救急車で救命救急センターのある大病院に運ばれたから安心と思ったら、すぐに転院を勧められるのが当たり前になる。自宅へ帰るしかなく、助けてくれる人もいないために在宅医療の環境も整えられず、衰弱して死んでいく人もいるかもしれない。

熊谷 賴佳 京浜病院院長

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くまがい よりよし / Yoriyoshi Kumagai

1977年慶應義塾大学医学部卒業後、東京大学脳神経外科入局。東京大学の関連病院などで臨床研究に携わったのち、1992年より現職。祖父と父親とも医師という医師家系で育つ。オリジナリティーあふれる認知症ケアの発案のほか、地域が一丸となった医療サービスの実現をめざして院外活動にも積極的に参加。認知症や地域医療に関する著書多数。

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