「誰もが住みたい街」に共通する絶対的条件

人はなぜ、吉祥寺にそこまで憧れるのか

住宅という観点でも同様の例がある。大手デベロッパー7社が2004年から行っている住みたい街ランキングでは新浦安、お台場、田園調布、下北沢など一時期は登場していたものの、ほとんど見かけなくなった街も少なくない。その一方で上位常連の吉祥寺、自由が丘、横浜のような街もある。

浮かんでは消える街と延々人気を維持し続ける街を比べると、その差が情報量であることは歴然だ。人気の街では商店街、商業施設、店舗から行政、個人に至るまで様々な団体、人が、同じ街に関わりながらも異なる情報を発信している。再開発のように発信元は開発事業者、内容は開発情報と単一なものである場合とは量、そして質も異なるのである。

つまり、コンテンツの多い街ほど情報発信量が多く、それが人気の源となっているのだ。吉祥寺が頭一つ抜けているのは、商店街、祭り、飲食店街、イベントなどに加えて、複数の大型商業施設、公園などの情報源となる資源がほかの街よりあることだ。井の頭公園だけを見ても動物園、花見、アートマーケッツ、公園周辺にある飲食店と様々な要素があり、経営主体が、訪れた人がそれぞれに情報を発信する。結果、自然に情報量が増え、それをマスコミが取り上げ、さらに情報が増えるという形が出来ている。

コンテンツ力をいかに生かすか

実際に住みたい街に住むかどうかは別問題ではあるものの、まず住みたいと思わせなくては生き残り合戦の土俵には乗れない。そのためにはコンテンツの豊富な街となり、情報を発信できることが必要なのだ。

だが、残念なことに行政はこれが苦手である。子育て世帯の人口増が著しい流山市は「母になるなら流山」などといった直截な情報発信で話題になったが、そこに追随する自治体がほとんど見られないことを考えれば、自治体の情報発信下手がよく分かるというものだ。

そもそも、吉祥寺のように情報発信の元となる資源に恵まれている街はそれほどない。資源が多ければ、生き残りを考えて頑張らなくても自然に情報は発信されるが、資源の少ない街では何か、それを補う手、あるいはこれまで資源と思っていなかったものを再発見する必要がある。

だが、その一翼を担うはずの行政は変化を強いられている。確実に分かっているのは懐具合が年々厳しくなっているということだ。すでにどの自治体も昭和30~40年代に大量に整備した市区町村有施設の維持管理に頭を抱えている。

たとえば、私が住む目黒区には175の区有施設があり、今後一斉に大規模改修、建替えの時期を迎える。これらの施設の維持管理経費は年間約200億円に上っており、今後40年間にかかると試算される更新経費は年間平均で約72.9億円という。目黒区の平成27年度の一般会計額は929億円。高齢化、人口減などで税収が減り、医療、介護その他の支出が増える中でこの負担は非常に重い。

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