【朝ドラ あんぱん】やなせたかし「戦地で紙芝居」ウケた訳 現地の大人も子どもも大笑い いったいなぜか?

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「フィクションに違いない」と思うほど予想外のやらかしをやってのけるやなせだが、どこまでもポジティブだ。結果的に「暗号教育隊」に配属されることになり、こう喜んでいる。

「地獄のような軍隊でも暗号班というのは無風地帯で、炎熱の営庭でしごかれている戦友を眺めてラクチンだなあと悦に入っていた」

行き先不明のまま輸送船で運ばれる

だが、入隊して2年が経とうとしているときに、やなせはいきなり輸送船に乗せられて、行き先不明のまま、船上で過ごすことになる。上陸した場所は中国の福州だった。なぜ、福州だったのか、やなせはこう分析している。

朝ドラ あんぱん アンパンマン やなせたかし
中国・福州まで輸送船で運ばれたやなせたかし。写真は現在の福州(写真:新華社/アフロ)

「上陸したのは台湾の対岸の福州だった。つまり日本軍総司令部は、アメリカ軍は台湾を攻めると考えて、そのためにはまず中国の対岸に基地をつくり、そこから対岸の台湾を攻撃すると考えたのだろう。しかし、アメリカは台湾をとばして沖縄を直接攻撃したので、ぼくらの部隊は空振りであった」

どこに連れていかれるかもわからずに船に乗せられて、やなせは戦死する覚悟だったが、肩透かしを食らうことになった。暗号班は部隊から離れた芋畑に陣地を敷いたため、なおさら緊張感がなかったらしい。本部からは遠く離れて、教練もない。ただ、防空壕用に穴を掘るだけで戦地での日々は過ぎていく。

時には、現地の住民たちに、占領軍の目的や方針を知らせて安心させる宣撫官(せんぶかん)のようなことも、やなせは行ったという。紙芝居を作って、現地語がわかる通訳を連れて村々を回ったのである。

驚くべきことに、やなせの紙芝居によって、現地の大人も子どもも、ひっくり返ってゲラゲラ笑ったという。いよいよやなせがエンターテイナーとしての才覚を発揮したか……と思いきや、そうではなかったらしい。

「娯楽のないところだから、そのせいもあるが、どうもそれだけではない。通訳の中国語にはどうもぼくの言ったことではない、日本軍の悪口みたいなのも入っていたようだが、まったく解らないからしようがない。 もしそうでなければ、あんなにメチャうけするはずがない」

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