【朝ドラ あんぱん】やなせたかし「戦地で紙芝居」ウケた訳 現地の大人も子どもも大笑い いったいなぜか?
おそらく通訳も、そして現地の人も、やなせの様子をみて「からかっても大丈夫だろう」となめてかかったのではないだろうか。やなせ自身も「多分ぼくはこの通訳にコケにされているのだろう」と感じたというが、怒りで威圧するようなことはしなかった。
やなせのことだから「この状況で笑えるならば何でもいい」、そんなふうにも思っていたのではないだろうか。
実は自信がなかった暗号の解読
戦地らしからぬ何とも平和な日々だが、暗号班として任務を果たさなければならないときもある。無線が入ってくれば、班長のやなせの出番だ。「○月○日○時、××の海浜に全部隊を集結せよ」といったふうに、作戦の詳細を解読して、大隊長に電文を渡している。
指示されたとおりの日時に、海浜に全部隊が集結すると、数百隻の鉄船が進んでくるのが見えたという。実はやなせはこのときに、内心ほっとしていたという。
「ぼくは電文を大隊長に渡す時に、もしぼくの解読がまちがっていたらえらいことになると思って内心気が気ではなかった」
解読に自信がなかったんかい! と思わずズッコケそうになるが、戦地らしからぬ平和な日々に、やなせは亡き父の存在を感じたという。普段は霊の存在を信じないやなせだったが、このときばかりは、父の霊が息子を戦死させぬように見守ってくれているとしか思えなかったのだ。
再び船に乗せられたやなせはしばらくして師団司令部のある地点に上陸。ここから上海まで陸路で大移動を行うのだという。1日平均40キロも行軍するなかで、敵から攻撃されることもあった。仲間の兵隊が死ぬのを見ながら、やなせはひたすら行軍し、上海へと向かったのである。
(つづく)
【参考文献】
やなせたかし『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)
やなせたかし『ボクと、正義と、アンパンマン なんのために生まれて、なにをして生きるのか』(PHP研究所)
やなせたかし『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)
やなせたかし『アンパンマンの遺書』 (岩波現代文庫)
梯久美子『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』 (文春文庫)
真山知幸『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたのか?』(サンマーク出版)
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