第二にEUは、レバノン、ヨルダン、トルコにいる400万人の難民を支援するため、これらの国々に十分な資金を提供する世界的な取り組みを主導しなければならない。
教育などのため、難民1人当たり少なくとも年間5000ユーロ、計200億ユーロが必要だ。投資を誘致し、地元住民と難民の両方の雇用を創出するため、同地域およびチュニジアとモロッコに経済特区を作ることをEUは後押しするべきだ。難民流入の最前線にある国々には、少なくとも年80億~100億ユーロが必要だ。残りは米国やほかの国々が負担する。
第三に、域内を統括する「EU亡命および移民局」の創設に着手し、いずれ「EU国境警備隊」を作る。現在の28の異なる亡命制度の寄せ集めは機能していない。新機関の創設で手続きが効率化され、雇用や起業、一貫した給付について共通規則が確立される。亡命が認められなかった移民への、効果的で権利尊重型の帰還政策が作り出されるのだ。
第四に、安全な経路を確立する。まずは亡命希望者をギリシャとイタリアから目的国に行かせる。パニックを鎮めるため、作業は急を要する。次の措置は、安全な経路を最前線地域まで延ばすことであり、そうすれば危険を冒して地中海を渡航する移民の数を減らせる。
真に欧州的な亡命政策が不可欠
最終的に欧州に到達できる可能性があれば、亡命希望者は現在の居住地にとどまる可能性が高くなる。国連難民高等弁務官事務所と協力して、トルコなどの最前線諸国と交渉し、複数の難民問題処理センターを開設することが求められる。
そしてEUの運用、財政方式は、亡命希望者や移民の待遇に関する世界標準の策定にも生かされるべきだ。これが総合計画の第5項目だ。
最後に、亡命希望者や移民が社会と融合するため、NGOや教会団体、企業などの民間スポンサーを募る必要がある。十分な資金のみならず、移民とスポンサーを組み合わせる人材と情報技術も必要だ。
戦争で荒廃したシリアからの脱出劇を欧州の危機にするべきではなかった。この危機は予見でき、欧州と国際社会は対処できたはずだ。ハンガリーのヴィクトル首相も6項目の対処計画を策定した。が、亡命希望者や移民の人権を国境警備よりも低く位置づけている。これはEU創設の価値を否定しEU法に反するもので、EUを分裂させ、破壊するおそれがある。
EUは、パニックと不要な人的苦痛に終止符を打つ、真に欧州的な亡命政策で対応しなければならない。
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