サンリオ「窮地のアメリカ」で復活導いた3つの転換 なぜ「6期連続赤字・大リストラ」から過去最高利益へと変貌を遂げられたのか
赤字にもがく中、創業者である辻信太郎名誉会長の孫に当たる辻朋邦社長(当時は専務)の指揮の下、2018年頃から北米での構造改革に着手する。3度のリストラや、サンフランシスコにあった本社事務所の閉鎖を行い、現地の直営店事業からも撤退した。
ピーク時にはおよそ120人いた現地子会社の人員は約3分の1にまで減り、まさにどん底の状況。否が応でも緊急性は社内に伝わった。そこから再起に至るまで、ポイントとなった方針転換は、大きく3つある。
まず取り組んだのが、SNSなどのデジタル施策だ。
ハローキティをはじめとするサンリオのキャラクターは、映画やテレビ、漫画などの出身メディアを持たないことが特徴だ。デザインの許容度が高く、多様な商品で使いやすいという利点がある一方、アメリカではディズニー映画のようなストーリーを持つキャラクターの人気が圧倒的だ。
とはいえ映画や番組を作るのは予算上も現実的ではない。そこで、より少ないコストと時間で効率的にストーリー性をキャラクターに与えられる、YouTubeのショートコンテンツなどのSNSで地道にマーケティングを続けた。SNS上のファンコミュニティは、撤退した直営店の代わりに消費者のトレンドを直接つかむのにも役立った。
ライセンス先との関係性を見直し
売り上げを追い求めて広げたライセンス先との関係にも、メスを入れた。
構造改革前には230社強あったライセンス先は、足元で190社前後まで減少。宮島氏は「現在は、短期的に売り上げに貢献するかどうかより、ブランドをお互い高め合えるライセンス先を選んでいる」と話す。
そのうち上位2割ほどの取引先を“キーライセンシー”として、「(商品の)クオリティや新商品の出し方、マーケティングの仕方まで密に連携を取っている」(宮島氏)。ブランド価値を陳腐化させずに、キャラクターの露出を増やす関係性の構築にフォーカスした。
現地子会社が戦略転換を進める裏で、サンリオではグローバルでのブランディング強化に向けた全社的な変革に着手していた。それが3つ目の転換だ。
営業利益500億円、時価総額1兆円の目標を10年前倒しで達成したサンリオだが、5月の決算説明会で辻朋邦社長は「まだまだ目指す姿には届いていない」と話した。アメリカで1つの勝ちパターンを見いだせれば、さらなる世界展開への弾みにもなる。本領発揮はこれからだ。
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