「特に鮮魚を扱う業態に関して言えば、いま大量出店のビジネスモデルはかなり厳しい」と野田代表取締役。いまのテラケンは、豊洲直送の鮮魚を仕入れ、その日のうちに店舗で加工する工程を徹底するが、そうすれば原価率のコントロールも難しい。魚を捌くスタッフによっても取れる可食部に誤差が発生し、腕利きの人材をどれだけ抱えられるかを鑑みると、大々的な展開は現実的とはいえない。
狙いは郊外のモール内店舗
コンパクトな店舗経営が求められるぶん、今後は立地の見極めが重要になる。
「当社の他ブランドでは、高輪の泉岳寺や、練馬区の光が丘団地に近いエリアなど、ファミリー層が入りやすい立地に店を構える。飲食店は立地が9割と言われる中、激戦区の繁華街などへの出店は避け、さくら水産の二の舞にならないようにする。

魚がイチバンに関して言えば、郊外のモール内店舗は勝算があると見込んでいる。かつて同様の環境下にあるさくら水産では、ランチが500円だった過去より、高価格帯にシフトした時期の方が客数も業績も向上した。女性客や家族が買い物帰りに寄る立地では、価格の優位性よりも、レストランのような落ち着いた雰囲気が求められる。こうした過去の業績も加味しながら慎重に見極めていく」(野田代表取締役)
一方で、さくら水産を出店する予定はないと明かす。立地や動線に恵まれた現存する11店舗を残すか、あるいは他ブランドへの看板変えを行い、一定の収益を確保していく計画だ。
改めて、さくら水産の変遷を振り返れば、飲食業態は常に市況の影響に左右される反面、一度ついたブランドイメージは上書きしづらい。そう考えれば、単一のブランドを一気呵成で出店するより、小回りの効くスケールで複数のブランドを構えた方が合理的に映る。さくら水産が最盛期から9割以上店舗を畳んだのは、一見寂しく映るが、根本的に見れば必然の流れと言えそうだ。
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