「今後、飲食業界で生き残るためには、いかに女性客を惹きつけられるかが重要になる。男女で飲み会を行う際も、女性が入店しやすい店が選ばれやすいため、来店のハードルが下がるよう刷新を行った。狙い通り、魚がイチバンはさくら水産に比べて、全体的に女性客やカップルの比率が多く、客層も10~20歳近く若い」(野田代表取締役)
こうした新旧の違いに迫ると、結局のところ消費者に伝わりやすいのは、表層的な部分が強いと言える。当然、裏側では地道な企業努力が行われているとはいえ、すぐに業績に直結するとは限らない。むしろテラケンの業態転換を見れば、屋号や内観から分かりやすさを主張したことが奏功した。
海鮮系居酒屋は、規模縮小を強いられる時代
テラケンは2026年までに、魚がイチバンの新規店を1~2店舗計画している。かつてさくら水産が敷いた大量出店の轍は踏まず、競争が高い都心部を避ける。消耗戦を避けながら、じっくり高付加価値の浸透を見据える方針だ。
テラケンに限らず、海鮮系居酒屋チェーン全体で見ても、いまは規模縮小を強いられる時代だ。チムニーの『はなの舞』は2015年末時点で298店舗あったが2025年4月末時点で96店舗に、モンテローザの『魚民』も最盛期に比べ大きく数を減らしている。
全国でそれなりに規模を拡げるとなれば、材料調達や品質管理を均一に揃えることも難しく、セントラルキッチンで加工した冷凍モノに頼らざるを得ない。加えて、人手不足から来る人材確保も難しく、オペレーションの効率化に迫られる。かたや物価高や人件費高騰で、割安な価格設定も難しければ、質と価格どちらも中途半端になり、客足が離れていくジレンマに陥る。

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