ドライアイと運動の関係が明らかに? 最新研究で示された「生活習慣と目の病気の関係」。睡眠と緑内障の関係を解明した研究も

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運動習慣が眼圧に与える影響が明らかに

2017年、日本眼科学会で画期的な研究発表が行われました。

「運動習慣が眼圧に与える影響」と題して、九州大学の研究チームにより、運動によって眼圧が下降することを示唆する研究結果が発表されたのです。

研究チームは、福岡県久山町で疫学調査(集団の調査を通して病気の原因や予防法などを考察すること)を行い、40歳以上の住人1871人(眼圧に影響を与える治療や手術をしている人を除く)を対象に、1週間当たりの運動回数・運動時間と眼圧の関係を、5年間にわたって調べました。

結果は、運動の回数と時間が多いほど、有意に(統計的に意味をもつ差があること)眼圧が低いことがわかりました。

緑内障の主要な原因は眼圧が高くなることであり、眼圧のコントロールが治療では欠かせません。

従来の標準治療では、眼圧のコントロールは薬と手術で行ってきました。しかし、一度下がった眼圧が再び上がったり、治療しても正常範囲に収まらなかったりする例は少なからずみられます。こうした状況に対して、運動という生活習慣と眼圧の関係を明らかにしたこの研究は、緑内障治療に新たな視点をもたらす注目すべきものといえます。

ドライアイの発症に関連していたものとは?

ドライアイと運動の関係が明らかに!

これまでドライアイは、コンピューターなどの機器を使用することが原因とされてきました。2021年、これに加えて、高脂肪食と運動不足がドライアイ発症に大きくかかわっているという研究が、名古屋アイクリニックの小島隆司先生によって報告されました。

研究によれば、ドライアイが起こる原因として、高脂肪食と運動不足によってマイボーム腺が詰まると指摘されています。

マイボーム腺はまぶたの縁にある皮脂腺で、涙の蒸発を防ぐ油分(マイボーム油)を分泌しています。マイボーム腺が詰まって油分が出なくなると、涙はすぐ乾いてしまいます。その結果、目の表面が乾くドライアイが起こります。

オフィスワーカーを対象とした研究で、ドライアイ群と非ドライアイ群を比較したところ、運動量が多い人ほど涙の分泌量が多いと報告されています。

睡眠時無呼吸症候群と緑内障の関係を解明

睡眠と緑内障の関係を解明した研究も発表されています。

2016年、北海道大学の研究チームは、睡眠時にイビキと呼吸停止を繰り返す「睡眠時無呼吸症候群」と緑内障の関係を明らかにする研究論文を、米国科学誌に発表しました。

睡眠時無呼吸症候群があると、緑内障にかかる率が正常な人の約10倍高いことは、従来から知られています。その原因として、呼吸停止時に眼圧が高まるのではないかと推測されていました。

眼圧は1日の時間帯や姿勢によって変動することはわかっていますが、睡眠中の眼圧を測定するのは困難でした。研究チームは、睡眠中にも装着できるコンタクトレンズ型眼圧計を用いて計測を行いました。その結果、無呼吸時には眼圧が下がることがわかりました。

研究チームは、緑内障の真の原因として、無呼吸による酸素不足が視神経障害を引き起こすのではないかと指摘しています。この研究から、緑内障の悪化防止のために、睡眠時には口呼吸とイビキを防ぐ「口テープ」をするようにと、私は患者さんに勧めています。

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