「100万回生きたねこ」→「100万回死んだねこ」、「わたし、定時で帰ります。」→「私、残業しません」に脳内変換されるのは必然だ

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この覚え間違いは、ただ楽しいだけではなく、人の記憶について大きな気づきを与えてくれます。

人生の大問題と正しく向き合うための認知心理学 (日経プレミアシリーズ)
『人生の大問題と正しく向き合うための認知心理学』(日経BP 日本経済新聞出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

人間はテキスト言語情報を、意味を抜きにした文字列として記憶するということが、極度に苦手なのです。

文字列を見るとすぐに意味を解釈してしまいます。そして、いったん意味を解釈すると、解釈した、つまり抽象化された意味しか記憶に残りません。

だから、「100万回生きた」が「100万回死んだ」として記憶されてしまう。「定時で帰る」が「残業しない」になってしまいます。

人間はそういう生き物なのです。そこが、言語を持たない動物やAIとは違うところです。

AIは文字列をそのまま記憶する

昨今、生成AIがより身近になってきました。

AIは人間とは違って、文字列を見て意味を考え、その結果を記憶するわけではありません。どんな文字列もそのまま正確に記憶します。文字列に対して意味の解釈をしないこと、そしてものすごくたくさんの文字列であっても記憶できることは、AIならではの特徴といえるでしょう。

今井 むつみ 慶應義塾大学名誉教授、今井むつみ教育研究所代表

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いまい むつみ / Mutsumi Imai

1989年慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。94年ノースウェスタン大学心理学部Ph.D.取得。慶應義塾大学環境情報学部教授を経て現職。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学。主な著書に『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』(日経BP)、『学力喪失』『ことばと思考』『学びとは何か』『英語独習法』(すべて岩波新書)、『ことばの発達の謎を解く』(ちくまプリマー新書)など。共著に『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(中公新書、「新書大賞2024」大賞受賞)、『言葉をおぼえるしくみ』(ちくま学芸文庫)、『算数文章題が解けない子どもたち』(岩波書店)などがある。国際認知科学会(Cognitive Science Society)、日本認知科学会フェロー。

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