自社営業部長と取引先役員が「経費水増し」した結果 大口顧客からの理不尽要求で”奴隷”にされかけ、憔悴しきった社長の決断は?
総売上高のうち、取引先のトップ1社が占める割合を「1社依存率」といいます。事例の会社のようになりたくなければ、この1社依存率は可能な限り、20%以下に抑えるということを、肝に銘じてください。どんなに高くても30%まで。もし30%以上になっているのなら、すぐにでも新規開拓に取り組んでください。
理想的には、依存割合20%前後の主要顧客が3社程度あり、10%程度の顧客が3社程度、あとは小口の顧客となっていることです。そうすれば、もし依存度トップの取引先からの受注がなくなったとしても、さほど慌てる必要はなくなります。
長期の業績安定に安心してしまう
次に、大口顧客の2点目のリスクである、「現状維持志向が強くなることで、組織が弱体化していく」について考えてみましょう。
中小企業が毎年安定的に一定以上の売上、利益の計上を続けていくことは、なかなかできることではありません。その状態まで会社を育てた社長の手腕は、まず素晴らしいと評価できるでしょう。
しかし、そんな会社でも、社長が「これでもう十分だ。あとは、この安定した状態がずっと続けばいい」と思っていれば、そこには大きな危機の萌芽(ほうが)が生じています。「このままでいい」と考えていては、環境変化に対応したり、より成長を目指したりするための努力をしなくなります。すなわち、新しい事業や商品を開拓すること、社員を教育してレベルアップすること、会社の組織をより効率的なものにすること、社長自身が勉強して経営者としての能力を高めることといった努力を、ないがしろにしてしまうのです。
その社長の姿勢は、当然社員にも伝播します。日々の業務の中で、どうすればもっと効率良く仕事ができるか、売上が伸びるかといったことを社員は考えなくなっていきます。それどころか、どうせ努力をしなくても同じように売上が上がり、同じように給料がもらえるなら、なるべく手を抜いて、疲れないように仕事をしようと考えるようになります。残念ながら、易きに流れるのは人間の性です。そうやって、いい仕事をしようという活気が社内から失われ、少しずつ組織がダメになっていくのです。
さらに、社長が現状を良しとしていれば、組織内で不正や不祥事などが発生していても、それに気づかないことがあり得ます。
以前、私たちの塾に入って指導を受けたいといってきた会社がありました。しかし、私がその会社を見にいったところ、現場のオペレーションもほぼ完璧、社員教育も行き届いて、社内もぴかぴかに掃除が行き届いている。おおむね非の打ちどころがありません。それで私は、「素晴らしい経営をしているから塾に入る必要はない」といったのですが、2年後にその会社で大問題が発覚しました。なんと、社員が取引先と組んで、商品部品を横流しして、私腹を肥やしていたのです。
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