自社営業部長と取引先役員が「経費水増し」した結果 大口顧客からの理不尽要求で”奴隷”にされかけ、憔悴しきった社長の決断は?
これは、元営業部長が入社してきたことがきっかけでした。以前に彼が勤めていた会社がX社と取引があり、役員とも懇意にしていたのです。そのコネクションがあったため、かなり大口の取引をX社から受注することができました。それから3年後には、売上高に占めるX社の割合は、約50%にも達していました。X社からの発注はほぼ毎月あり、売上に大いに貢献していました。ただ反面、予算や納期が厳しく、粗利率は他の取引先に比べて大幅に低くなる上に、納期に間に合わせるために無理な残業をしなければならないこともたびたび発生していました。
そんなとき、事件が発生しました。
なんと、営業部長がX社の役員と組んで、経費の水増しをしていたことが発覚したのです。
大口顧客からの理不尽な要求
社長は激怒して営業部長を解雇しましたが、それに対してX社の役員が「その解雇を取り消せ。さもないと、3カ月後にはお宅との取引を打ち切るぞ」と脅しをかけてきたのです。
社長は青くなって私のところに相談にきました。その内容は「なんとか穏便に営業部長に戻ってきてもらって、X社との取引を継続したいがどうすればいいか」というものでした。
私は思わず、「アホいうな!」と一喝しました。ここでそんな要求を飲んだら、X社に人事権を握られて、この先ずっとX社の奴隷になる。経営者としてそれでいいのかと。
しかし社長は、50%も売上が減ったらとてもやっていけないと、憔悴し切った表情です。
そこで、私は会社に行って社長とともに会社の窮状を社員に説明しました。そして、社員一丸となって、新規取引先開拓の大作戦を実施しようと、熱く檄を飛ばしました。社員は皆理解してくれて、全員で社長を支えて、会社の危機を乗り越えようと、ボルテージが上がります。私はその姿を見て、「これなら大丈夫だ」と確信しました。そして、社長にはX社に「お好きにどうぞ」と伝えさせたのです。
その結果、本当に3カ月後にはX社からの発注がなくなりました。しかし、その間に開拓した新規取引先があったため、売上は3割減程度で済みました。そして、そこからさらに半年ほどあとには、X社と取引していたときと同程度の売上規模まで回復したのです。
しかも、新規取引先はいずれもX社より高い粗利を得られる価格での受注となったため、粗利率が5ポイントも上昇しました。
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