このバーニーズ・マウンテン・ドッグの症例を含め、フィラリア症が原因で亡くなったイヌの遺体を、僕はこれまでに20体以上見ています。飼い主さんやかかりつけの獣医師への聞き取りで、いずれのケースもフィラリア症を予防していなかったことがわかっています。
なかには「うちの子は室内飼いだから、フィラリア症にはかからないと思っていた」とおっしゃった飼い主さんもいました。
しかし、たとえ室内で飼っていたとしても、蚊の侵入を完全に防ぐことは難しく、残念ながらフィラリアに感染してしまうことはあります。室内飼いであっても、フィラリア症予防は必須です。
フィラリア症予防の基本は、先にも述べたように投薬です。予防薬といってもワクチンではなく、体内に入ってきたフィラリアの幼虫を継続的に駆虫し、成虫にならないようにする薬です。
フィラリアの予防薬には、大きく、飲み薬、滴下薬(スポットタイプ)、注射という3つのタイプがあります。
飲み薬であれば、皮膚が弱い子にも使えて比較的安価。滴下薬であれば、飲み薬を吐き出してしまうような子にも確実に投薬できる。注射であれば、飲み薬や滴下薬が複数回の投与が必要なところ1年に1回の注射で通年の予防ができる……など、それぞれにメリットがあります。 かかりつけの獣医師に相談して、その子の体質や性格に合った方法を選びましょう。
感染していると治療できない
大事なのは、予防薬を投与する際には、事前に感染がないかの確認をすることです。
すでにフィラリアに寄生されていた場合、子虫が少なければ駆虫薬で比較的安全に駆除できます。しかし、心臓内などにすでに成虫や大量の子虫がいる場合、駆虫薬でフィラリアを一斉に死滅させると、イヌの体がショックを起こす危険性があります。
だから、フィラリア症は予防が最も大事なのですね。
蚊が活動を始める今から、いなくなる11~12月までが、フィラリア症予防が推奨される期間です。地域によってフィラリアを媒介する蚊の発生時期が異なりますから、お住まいの地域の動物病院にかかりつけの獣医師をつくっておき、その獣医師の指示に従うようにするとよいでしょう。