「南口はやや寂れてる」…池袋から7駅、"人気じゃないほう"の練馬「東武練馬」の意外な実態。「都会すぎず、田舎すぎない」街の実情とは?

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市川さんのシェアハウス運営歴は6年になる。以前は別の街でやっていたが、1年前に東武練馬に惚れ込んでやってきた。

「今やっている場所は満室なんですけど、時々空きが出るので、その時は市川野宿のXで告知します。家賃は2万7000円〜3万1000円、スペースによって少しずつ違います。いろんな背景を持った人が出入りしているけど、みんな仲良くやってますよ」(市川さん)

昭和22年からの陶器屋兼タバコ屋

坂の多い徳丸地域をうろうろしたあと、再び東武練馬の駅界隈に戻ってきた。

駅の南口すぐに不思議な店を見つけた。看板には「TOBACCO」とあるのだが、ショーケースにタバコの姿はない。恐る恐る扉を開けると、店主の田中昇さんが笑顔で迎えてくれた。

レンタルスペースAo
レンタルスペースAo(練馬区北町2-38-8)。南口すぐの場所にある(筆者撮影)
田中昇
店主の田中昇さん(筆者撮影)

「ここはね、私の両親が昭和22年から陶器店をやっていたんです。そこでタバコも売っていた。3年前に母が亡くなって、いろいろ考えたんだけどレンタルスペース『Ao(あお)』として再オープンすることにしたんです。リフォームは私たち夫婦ふたりでやりました。

表の『TOBACCO』っていう看板は撤去するつもりだったけど、地元の友人が残したほうがいいんじゃないかって言ってくれて、そのままにしてます。いいアクセントになってね、今では残してよかったと思ってますよ」(田中さん)

そう語る田中さんは、生まれも育ちも東武練馬だ。窓の外に視線を移し、遠くを見つめるような目をしてこんな話をしてくれた。

「私らが子どもの頃は、駅の向こう(板橋側)はとくに自然が残っていましてね。畑や田んぼなんかもたくさんあった。友達と連れ立ってザリガニを捕まえに行ったりしたもんです。最近はね、イオンさんが頑張ってくれてることもあって、若い夫婦も増えてきてますね」(田中さん)

ただ、駅の南口界隈は昔よりにぎわいが減っているのだという。

「ここから少し歩いたところに、『北町アーケード』っていう商店街があります。かつてはかなり勢いがあったんだけど、今は少し落ち着いた感じになっちゃってますね。

でも、当時の雰囲気が今も残っているので、最近はやりの昭和レトロブームってことで、見物しに来る人は増えているようですね」(田中さん)

北町アーケード
昭和レトロの雰囲気が漂う北町アーケード(筆者撮影)

都会すぎず、田舎すぎない。坂が多くて筋肉痛になってはしまったけれど、東武練馬は昭和の記憶と令和の便利がぎゅっと詰まった、住むとちょっといい街なのである。(編集:國友公司)

【もっと読む】品川から2駅、知る人ぞ知る「処刑場があった街」の"実態"  罪人が渡った「なみだ橋」の残る街が、都心なのに再開発されない事情 では、街に詳しいライターの末並俊司さんが「立会川」を訪問、豊富な写真とともにその魅力をお伝えしている。
画像をクリックすると本連載の過去記事にジャンプします
末並 俊司 ライター

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すえなみ・しゅんじ / Shunji Suenami

福岡県生まれ。93年日本大学芸術学部を卒業後、テレビ番組制作会社に所属。09年からライターとして活動開始。両親の自宅介護をキッカケに介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)修了。現在、『週刊ポスト』を中心として取材・執筆を行っている。

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