26歳年下の妻との運命的な出会い
44歳の頃、ふと社会人スクールの講師の求人が目に入った。図面やパース(建物などを立体的に表現する図法のこと)の描き方などを教える内容で、「現場の経験が活かせるかもしれない」と応募すると即採用。講師として働くことになった。
そこに生徒として訪れたひとりの女性と親しくなった。「何を話しても、驚くべきスピードで素晴らしい反応が返ってくる。その聡明さに惹かれた」。ふたりの間には26歳の年齢差があったが、やがて自然に交際が始まった。その人こそが現在の妻である。
講師業を3年間続けたのち、片山さんはソフト開発に専念することを決意。47歳でソフト会社を立ち上げた。
当時交際相手だった妻も社員として働くことになり、「社員間で気を遣われないように」と結婚は控え、交際期間を約10年経てからようやく結婚に至った。その間、倒産の危機を共に何度も乗り越え支え続けた妻は、片山さんにとっては家族としてだけでなく、ビジネスパートナーとしても唯一無二の存在になっていた。
「最初は全然売れませんでしたよ。社員や妻は、コミュニケーションが苦手な私をソフトの開発だけに没頭させてくれた。その一方で、それ以外の部分を全てやってくれたんです。そのおかげで、事業を軌道に乗せることができました」

還暦目前の第1子に「拍手喝采」
プライベートでは、結婚してから4年目の夏に第1子が生まれた。このとき、片山さんは59歳。同窓会で「この歳になって子どもができたんだ」と同級生たちに報告すると、拍手喝采が起きたという。
還暦を迎えてからの子育ては「むちゃくちゃ楽しかった」。自営する会社の事務所は自宅近くにあり、平日、息子さんは幼稚園などから帰宅するといつも仕事場に現れ、「お父さん、ただいまー!」と言って入ってきた。その息子さんを毎回「おかえり」と抱きしめ、仕事へ戻る。休みの日は必ず一緒にどこかへ出かけ、共に過ごす時間を心から楽しんだ。


「小さい頃はよく山へ連れていきました。何かの本に『子どもと一緒に山登りをすると、大人になっても仲がいい』と書かれていたんです。理由は確か、大人も子どもも一緒に必死で山道を歩いて登ると、子どもの中に『人はみな対等である』という意識が植え付けられて、大人と対等にコミュニケーションを取れるようになるからだとか」
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