"廃墟寸前"劣悪な状態で放置された文化住宅、今や人が集まる場所に再生されたミラクル。改修費用は新築以上、それでも壊さなかったのはなぜ?

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南棟、角住戸の内部
南棟、角住戸の内部。かなり手が入っていた住戸だったが…(写真:オルガワークス提供)

南棟再生計画がスタートしたのは北棟完成の半年後。衣食住に関わる仕事に加え、ライフワークとして地域活動に関わっていた小川さんは北棟だけでは完成していないと感じていたそうで、であれば南棟に何を作るべきかを数年かけて考えてきたという。

「アートを通じてモノを作る人同士は北棟でつながるものの、そこには地域への広がりがない。もっとこの場を地域の毎日に必要なものにしていくためにはどうすれば良いか、それを考えるためにしばらく飲食店を経営することにしました」

飲食店
コロナ禍の間、2人で飲食店を経営。そこで知り合った人たちがその後に作ったヨリドコ大正るつぼんに店を出したり、手伝ったりしてくれている(写真:オルガワークス提供)

次に南棟を再生する際には食が絡むだろうと予測、自ら運営できるノウハウを身につけようと考えたのだ。あえて大正区のようにわざわざ人が足を運ばない、不便な場所を選んだ。

すると不思議なことに弁護士などいわゆる先生と呼ばれる職種の人たちや行政職員、介護職、看護職など人の悩みを解決する側の人たちが集まるようになった。そこで多くの人たちと話をする中で福祉の本質は人間関係であることに気づき、南棟を関係性を紡ぐ、地域の人たちの生活に欠かせないハブにしようと思うようになった。

福祉×アート×小商いの場として

その結果、南棟は「ヨリドコ大正るつぼん」という訪問介護事業所、就労支援事業所、そこで作ったヴィーガンスィーツを売る店、添加物の少ない優しい味の惣菜店などが入る複合施設となり、南北2棟の間には小さいながらも緑のある中庭が生まれた。小川文化の文化住宅2棟は「福祉×アート×小商いの場」として再生されたのである。

小川さんと細川さん
再生された小川文化ことヨリドコ大正メイキン(右)、るつぼん(左)の前で小川さん(右)とビジネスパートナーの細川さん(写真:筆者撮影)
中庭
中庭は憩いの場となっており、会話を楽しむ人、弁当を広げる人などさまざま(写真:オルガワークス提供)
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