"廃墟寸前"劣悪な状態で放置された文化住宅、今や人が集まる場所に再生されたミラクル。改修費用は新築以上、それでも壊さなかったのはなぜ?

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角の住戸にイラストレーターが移住
角の住戸にイラストレーターが移住、情報を発信してくれた(写真:筆者撮影)

「(彼女は)築200年くらいの、外壁が襖(ふすま)という荒廃した古民家で、寝袋で寝ていたそうです。それに比べれば小川文化は屋根も外壁もあって都心までバスで10分。すごい!と喜んで引っ越してきてくれました」

だが、残置物だらけ、害獣の死骸やら不気味なモノもある住宅の改装は女性一人の手には負えず、彼女はSNSで「誰か手伝って」とSOSを発信した。それに多くの人が反応、DIYを手伝ってくれたのだが、そのうちの一人に大正区区長だった筋原章博さんがいた。

「区長」というタスキをかけてやってきた筋原さん(!)を最初はなりすましでないかと警戒した小川さん。だが、行動派で大正区で増加している空き家問題に関心を持っていた筋原さんは大正区などと民間が空き家活用のために作ったWeCompass(大正・港エリア空き家活用協議会)という団体を紹介してくれた。

「区としてお金は出せないものの、情報その他での協力は惜しまないということで、ようやくリノベーションへの道が開かれたのですが、何を作るかは二転三転。

最初は縫製工場に務めるお針子(裁縫する女性のこと)さんの多い地域だったので縫製工場にしようと思ったのですが、収支が合わない。1年以上検討しても決まらなかったので、一緒にシェアオフィスを企画した細川さんに仲間に加わってもらうことにしました」

まずは北棟の再生に着手

企画力のある細川さんが加わったことで計画は一気に進んだ。最終的にはモノ作りの歴史のある地域であること、シェアオフィス経営のノウハウがあることなどから2階を5戸のアトリエ兼住宅に、1階を販売スペースもあるシェアアトリエに改修すると決めた。

大正区という大阪市の中では外れにある、認知度のあまり高くない場所で、かつ駅からも十数分と不利な立地でもあることから存在を広く知ってもらおうと耐震改修の見学会や、壁紙を貼ったり柱を磨いたりするDIYワークショップなどを開催。

2階住戸は各部屋ごとに大学の建築学部学生やインテリアコーディネーター協会の女性グループなど、さまざまな人が異なる改装を施すようにするなど話題づくりを仕掛けていった。

北棟が再生。南棟は以前のまま
北棟を先に再生し、南棟は以前のままという時期(写真:オルガワークス提供)
北棟の1階部分
北棟の1階部分。手前に販売などで入居者が使えるスペースがあり、奥はアトリエ(写真:筆者撮影)
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