「杉玉いいよね…って、スシロー系だったの?!」気づけばあちこちにある、居酒屋ずし「杉玉」。≪すしの総合商社化≫の”巧みな戦略”
2月から加わった「スペシャルとろかつお」を例に取って説明しよう。
ネタがシャリを包むように握られ、ひと口でパクッと頬張れる。脂がのったとろかつおと爽やかなシャリが口いっぱいに広がり、するりと喉を通る。その秘密はワサビの置き方や包丁の入れ方だ。
商品企画部部長・城野明彦氏いわく「ワサビを上にのせるか、内側に挟むか、包丁を入れるかで味わいが変わる」。ネタに入れた切り目によって柔らかさを出し、脂のくどさを抑え、飲み込みやすさを追求している。
シャリは黒酢とバルサミコ酢をブレンド。甘みを抑えた爽やかな香りで、とろまぐろ、サーモン、はまちといった脂の強いネタとも好相性だ。「お酒と合わせてもシャリだけでつまみになる配合」(城野氏)とのこと。


グループスケールが生む調達力
杉玉の強みは①食材調達力 ②商品企画力 の掛け算だ。
まず調達力について見ていこう。
「スシロー」や「京樽」など、F&LCでで回転寿司や持ち帰り寿司を多数展開していることによって、大量仕入れでコストを抑えられるだけでなく、希少素材も確保しやすい。スシローでは店舗数の兼ね合いで常時販売が難しい食材を、杉玉の店舗数なら通年提供できる。
ネタは規格化され、厚切りにも包丁を入れやすい状態で届く。
例えば前述の「思わず写真を撮りたくなる、厚切り6貫盛り」も、美しい包丁の目が入っており、熟練の職人技を思わせる。しかし、城野氏によれば、加工しやすい状態でネタを仕入れており、熟練技がなくても扱うことができるという。
100店舗を展開するチェーンで全店に職人をそろえるのは難しいため、オペレーションのハードルを下げているわけだ。同チェーンの従業員のうち寿司経験があるのが3割程度とのことだ。
それでも職人が手で握った味と食感を寿司ロボットで再現し、手仕事の味に近づける。100店舗で全員が熟練職人とはいかないが、ロボ+ひと手間でクオリティを担保している。

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