京急の線路に垂直に交わるかっこうで流れているのが駅名にもなっている立会川だ。
いくつか橋がかかっているのだが、そのひとつに「浜川橋」という橋がある。地元の人たちはこれを「なみだ橋」と呼ぶ。そう教えてくれたのは、この地で古くから商っている「大黒屋 立会川店(品川区東大井2-25-16)」のご主人、野口清彦さんだ。

「うちは主におせんべいなどを扱う店です。店の建物自体は築60年くらいですね。店は50年前からやっています。
江戸時代後期ころは、このあたりの品川とか目黒なんかではたけのこの栽培が盛んだったんですよ。その頃あった竹林は関東大震災とか第2次世界大戦の空襲で焼けちゃったけど、かつてたけのこの産地だったということで、うちではたけのこの形を模したせんべいを売り出しました」(野口さん)
“石を投げれば親戚にあたる”住み良いエリア
取材に伺った日は残念ながらたけのこせんべいは完売していた。早めに行かないと出会えないほどの人気商品だ。
「近所には古くから住んでいる人が多いから、親戚もたくさんいる。地元の人たちで集まるとよく“石を投げれば親戚にあたる”なんて話をしますよ。
そのぶん地域の結びつきも良好です。かといって排他的というのでもありません。立会川駅は急行を使えば品川まで2駅ということもあって便利でしょ。その割には家賃もリーズナブルだから人気の地域なんです。最近は若い人も増えているようですね」(野口さん)

店の歴史は50年だが、野口家は江戸の文化年間(1804〜1818年)からここに住んでいたという。
「埋め立てられる前は、この目の前がもう海だったんですよ。その頃の野口家は漁師をやっていたようですね」
野口さんは店に飾られた古い風景画を指して続ける。
「家の前の通りは旧東海道なんですよ。こうした交通インフラの要衝は、一般的に地盤などがしっかりしているんです。そういう意味でも住みやすい街といえるかもしれませんね」(野口さん)

無料会員登録はこちら
ログインはこちら