強化される「研究者弾圧」、不合理なトランプ政権の施策はアメリカを"中世"に逆戻りさせる

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トランプ政権が研究者や研究機関に対する締め付けを強化している理由は、以下のような政治的・思想的背景や利害関係だ。

第1は、科学的見解と政権の政策との対立だ。トランプ政権は、気候変動やワクチン、感染症対策などについて、既存の科学的コンセンサスに懐疑的な立場を取っている。とくに、気候変動を「誇張された脅威」とみなし、再生可能エネルギーへの投資ではなく、石炭・石油などの化石燃料産業を保護する政策を重視している。

また、新型感染症や公衆衛生の専門家による「経済活動の制限要請」なども、政権の経済優先方針と衝突した。

第2に、「ディープ・ステート」(ワシントンの官僚機構)や、大学・研究機関などの知識エリート層への不信がある。そして、科学者や専門家を「既得権益の一部」として敵視する。

政権は、こうした感情を背景に、科学者や専門家を「反トランプ勢力」とみなして、その影響力を排除しようとしているのだ。アメリカは中世の暗黒時代に逆戻りしているとしか思えない。恐ろしいことだ。

すでに低下している連邦政府の資金比率

大学や研究機関などの高等教育機関においては、連邦政府が研究資金の主要な供給源となっている。2021年には、これらの機関が実施した研究のうち約52%を、連邦政府が資金提供した。

基礎研究に関しては、連邦政府が最大の資金提供者であり、2022年には全体の約40%を占めていた。これは、企業による基礎研究支出(約37%)を上回っている。

2022年のアメリカ全体の研究開発支出は約8920億ドルで、そのうち連邦政府が占める割合は約20%だった。これは1960年代の約66%から大きく減少している。一方、民間企業の研究開発支出は増加傾向にあり、現在では全体の約70%を占めている。

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