強化される「研究者弾圧」、不合理なトランプ政権の施策はアメリカを"中世"に逆戻りさせる

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すでに問題になっていることとして、次のような事例がある。

プリンストン大学は、気候変動研究に対する約400万ドルの資金を削減された。同大学の研究が「誇張された気候の脅威」を広めているとする政権の主張に基づいたものだ。

また、環境保護庁(EPA)は科学研究プログラムの廃止を計画。1000人以上の科学者や技術者が解雇される可能性がある。

トランプ政権は、疾病予防管理センター(CDC)や食品医薬品局(FDA)などの連邦保健機関に対し、外部とのコミュニケーションを停止するよう指示した。さらに、CDCに対して、「トランスジェンダー」「胎児」「科学に基づく」といった用語の使用を禁止するよう指示した。

このような言語制限は、科学的表現の自由を侵害するものとして批判されている。 これにより、食品リコールや疾病の発生に関する情報提供が困難になると懸念されている。

研究者が追い込まれた不合理な解雇

トランプ政権下での研究者への締め付けの一例として、海洋大気庁(NOAA)の研究者が「能力不足」を理由に解雇された事件がある。この解雇は、政権の大規模な連邦職員削減政策の一環として行われた。

解雇理由として、NOAAは「あなたの能力、知識やスキルは当局の現在のニーズに合致せず、雇用継続には適さないと判断した」と通告した。対象者の中には、ハリケーン予測モデルの専門家であるアンドリュー・ヘイゼルトン博士も含まれている。彼はSNSで「このプロセスは混乱と無意味さに満ちていた」と述べた。

これらの解雇は、NOAAの気候研究や天候予測の能力に深刻な影響を及ぼしており、国際的な災害対応や気候変動の監視にも支障を来している。また、政権は今後さらに1000人以上の職員削減を計画しており、科学界からの懸念が高まっている。

このような一連の動きは「政府効率化省(DOGE)」による連邦政府の規模縮小政策の一環であり、科学研究や公衆衛生、安全保障などの分野に影響を及ぼしている。航空宇宙局(NASA)や合衆国環境保護庁(EPA)、国立衛生研究所(NIH)などの主要機関でも同様の解雇が進行しており、研究者の間では「科学的亡命」を検討する動きが見られる。

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