非常時に活躍する「特設公衆電話」の正体 なぜ自治体で公衆電話の導入が増えているか
そもそも公衆電話は、電気通信事業法で設置が義務づけられている第1種(約11万台)と、それ以外の2種に分けられる。1種の場合、市街地は500メートル四方に1台、そのほかは1キロメートル四方に1台を目安に、設置されている。人が住んでいる地域を対象に、野外における通信手段を確保するものだ。最近の利用実態について、NTT東の島村氏は「携帯電話の充電が切れた場合などに使われているようで、病院や駅、空港に設置された電話がよく利用される」と説明する。余談だが、なぜか電話ボックスの中で、携帯電話を使うユーザーも多いという。
公衆電話が減る中で、なぜ、特設公衆電話が増加しているのか。転機となったのは2011年3月11日の東日本大震災だった。被災地への安否確認、帰宅困難者による自宅への電話が集中したため、前述の通信制限が行われ、固定、携帯ともに通話のほとんどが遮断された。一方、公衆電話は通信制限を受けずに通話できるため、非常時でもつながりやすい状態だった。NTT東は緊急措置として、地震発生の3時間後に北海道を含む東日本全域で公衆電話の料金を無料化し、災害時のインフラとして役目を果たしたのだった。
事前設置で備える自治体
「家族の無事が確認できた」「被災地の親戚と連絡が取れた」。大震災を機に、公衆電話の役割が見直されたことで、特設公衆電話の事前設置を検討する自治体は増加していったという。「避難所を回って設置するのは手間がかかる。災害時に即座に使えるようにするため、自治体と協力して設置を進めている」(NTT東・災害対策室の服部健二氏)。実際、今年3月にNTT東と包括連携協定を締結した川崎市は、帰宅困難者向けの対策訓練として、特設公衆電話の設置、利用体験などを盛り込んでいる。
NTT東では自社サイトをはじめ、グーグルマップや各自治体のハザードマップに特設公衆電話の位置を掲載し、周知を進めている。各自治体の防災担当者と協議を進め、2016年度末にはNTT東が5万台(2万4500カ所)、NTT西も3万4000台(1万5000カ所)まで、設置台数を増やす見通しだ。
多くの人が携帯電話とスマートフォンを手にする時代になり、見向きもされない存在になりつつある公衆電話。だが、災害時の通信の確保は、永遠の課題。明日起きるかもしれない災害に備えるうえで、公衆電話が果たす役目はまだまだ大きい。
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