非常時に活躍する「特設公衆電話」の正体 なぜ自治体で公衆電話の導入が増えているか

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NTT東西のエリアでは、街中の公衆電話の数は、ピークの94万台から18万台まで減っているが…

30年間で約75万台が姿を消した――。

この数字が示すのはNTT東日本、NTT西日本が運営する、公衆電話の数だ。1984年度の93.4万台をピークに、2014年度末には18.3万台まで縮小した。各家庭内にある固定電話の普及はもちろんだが、携帯電話の普及によって、その数は大幅に減少している。

今では月1~2回しか利用されない公衆電話もあり、1台当たりの月間発信回数は、2000年度の236回から、2014年度には49回まで落ち込んだ。「1カ月に1万円稼げる電話はほとんどない」(NTT東・公衆電話サービス担当の島村昌樹氏)ために、公衆電話事業はNTT東西合わせて、20億円超の赤字だ。最後にいつ利用したのか、はっきりと思い出せない方も多いのではないだろうか。

災害時こそ威力を発揮する

ところが、そんな中でも、設置台数を伸ばしている“公衆電話”があることはあまり知られていない。それが「特設公衆電話」。災害時に避難所などの通信手段を確保するための公衆電話だ。外見、通信の仕組みは、一般の固定電話と変わらないが、災害発生時に警察や消防など重要通信を守るために行われる通信制限の影響を受けず、優先的に通話できる。

特設公衆電話は、自治体の要請によってNTT東西が設置するもので、設置、利用とも基本的に無料だ。モジュラージャック(電話やファックス、LANの接続などに用いられるコネクタ)に、電話線を差し込めば、すぐに利用できる。1台当たりのコストは月1500円程度でNTTなどが負担するため、自治体側は配管工事などの微々たるコスト負担で済む。

現在、特設公衆電話は、小中学校や公民館など避難所となる施設に加えて、多くの帰宅困難者が予想されるオフィスビル、ホテル、鉄道駅、地域の振興センター、道の駅、集会所などに設置されている。収容人数100人当たり1台が設置の目安だ。以前は災害時にNTTが配布して利用されていたが、最近は事前設置型が増加し、導入する自治体の数は増えている。2014年度末時点で、NTT東は2万5000台、NTT西は1万6200台を設置済みである。

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