「大学無償化の甘い罠」苦学生を救うどころか、その先には不都合な未来が待っている
また、無償化によって大学の経営が安定するという先ほどの論点について、大東文化大学・江崎康弘特任教授は、「無償化で日本の大学の荒廃がますます進むのでは」と逆の見解を示します。
「近年、行財政改革の流れで国・自治体から大学に支給される運営交付金・補助金が減らされ、各大学とも人員・研究費・諸経費の削減など対応に苦慮しています。国・自治体が限られた予算の中で無償化をしたら、既存の予算を絞られ、そのしわ寄せが研究・教育の現場に及ぶでしょう」
限られた範囲の調査ですが、大学を広く国民に教育機会を提供する場と捉えるのか、学術研究の場と捉えるのかによって、無償化への賛否が分かれるようです。
大学は国家の競争力を左右する
ということで、立場の違いからなかなか合意点を見出しにくい問題ですが、筆者は国家の競争力という観点から高額化を強く支持します。
知識社会の現代では、大学が国家の競争力を左右します。アメリカでは、トップ大学が高い学費で収入を確保し、好待遇で世界中から優秀な研究者を集めて高度な研究・教育をしています。
トランプ大統領のリベラルな大学に対する圧力は懸念されますが、魅力的な大学に世界中から優秀な学生が集まり、産業の発展に貢献するという好循環になっています。
一方、日本の大学は、学費収入が少ないため、教員の待遇や研究環境がどんどん悪化し、「安かろう悪かろう」という状態に陥っています。大学から先端産業やベンチャー企業が生まれず、日本全体がグローバル競争から取り残されています。
この状態を抜本的に解決するためには、思い切って学費を値上げするべきでしょう。値上げしたら学生が集まらなくなるという安さだけが魅力の大学は、廃止に追い込まれてもやむなしと考えます。
もちろん、値上げによって前途有望な人材が経済的理由で進学を断念することがあってはいけません。値上げと同時に給付型の奨学金や学生寮を大幅に拡充する必要があります。
大学の学費は、国家の命運を左右する重要な問題。無償化するにせよ、高額化するにせよ、先送りせず、何らかの結論を出したいものです。
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