「大学無償化の甘い罠」苦学生を救うどころか、その先には不都合な未来が待っている
ドイツでは、2014年に国公立大学の学費が廃止されました。EU圏内からの留学生についても無償です。ただ、登録料として年300〜500ユーロ(約5万〜8万円)を徴収しており、完全無償ではありません。私立大学は有償です。私立大学・外国人留学生を含めて完全無償という国は、筆者のサーチの範囲では確認できませんでした。
一方、世界には、学費が高く、高騰し続けている国があります。その代表がアメリカです。ハーバード大学の標準授業料は年5万9320ドル(約890万円)、MITは年6万1990ドル(約930万円)です。高い学費を原資に充実した教育を行い、学生には卒業したらガッツリ稼いでもらおう、という考えです。
アメリカほどではありませんが、イギリス、オーストラリア、カナダなどでも学費が高騰しています。こうして見ると、「無償化と高額化の二極化が進んでいる」という認識が正確だと思われます。

無償化でゾンビ大学が延命する?
無償でもなければ、アメリカほど高額でもない日本の大学の学費は、今後どちらに進むべきでしょうか。仮に私立大学も含め無償にしたら、どうなるでしょうか。
現在、大学4年間の学費の総額は、国公立大学が約250万円、私立大学は文系約400万円、理系約540万円、医歯系2300万円以上です。アメリカに比べるとかなり安価ですが、近年の実質賃金の伸び悩みで、家計の大きな負担になっています。
また、首都圏では家賃など生活費が上昇しており、地方出身者が首都圏の大学で学ぶハードルが高まっています。東京大学の合格者に占める関東1都6県の出身者の割合は約60%、早稲田大学・慶応義塾大学では75%前後に達します。
学費を無償化すれば、こうした“ローカル化”の状況が改善されます。経済的理由で上京しての進学を断念することが減り、教育のすそ野が広がります。全国から自分が本当に行きたい大学を選びやすくなり、学生本人の成長にも大きなプラスでしょう。
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