「大学無償化の甘い罠」苦学生を救うどころか、その先には不都合な未来が待っている

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以上が学費無償化のメリットですが、良いか悪いか見解が分かれているのが、大学経営に与える影響です。

全国の大学のうち定員割れの割合は2024年に59.2%と過去最高を更新し、募集停止・廃止に追い込まれる大学が出始めています。学費無償化で学生数が増えれば、学費収入や補助金・交付金収入が増えて、大学の経営が安定します。

ただ、大学の経営が安定すると、大学が経営努力を怠るかもしれませんし、本来は淘汰されるべき劣悪な大学が存続します。ネット掲示板やSNSを見ると、こうした問題点から「高校はともかく、大学まで無償化し、ゾンビ大学を延命させるべきではない」とする世論が優勢のようです。

大学教員の多くは無償化に否定的か

ところで、大学教員は、無償化についてどう考えているのでしょうか。今回、大学教員にヒアリング調査を実施し、31名から回答がありました。大学無償化への賛否を尋ねたところ、「利害関係者の置かれた立場がまちまちで、何とも言えない」(国立大学・I教授)という声や次のような賛成意見が一部にありました。

「教育機会を広く提供するのは、大学の基本的な使命です。地方には経済的に厳しい家庭が多く、障害を取り除く政策には賛成です。教育の質の低下など懸念点はありますが、まずは大学の使命を果たしてから改善していくという順序かと思います」(公立大学・N教授)

しかし、回答者の大半は、大学無償化に否定的でした。文教大学・田中克昌准教授は、「大学の無償化とは、高級寿司店が無料でおにぎりを配るようなもの」として、疑問を呈します。

「専門教育サービスを提供する機関という大学の原点に立ち返ると、本来、誰もが目標とするべき機関ではないでしょう。大学は専門教育サービスを研ぎ澄ますことを優先すべきであり、進学先として無償化の対象となること自体が不自然だと考えます。今の時代、他のサービスであれば、むしろ、値上げをするはずです」

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