だから、製造業を復活させるために、相手を締め出すだけでは、国内産業が破綻するだけに終わる(中国やアジアを完全にサプライチェーンから閉め出したら、まったく何も生産できなくなるだけだから)。
製造業を復活させる政策、仕組みの準備、予算の議会通過だけでなく、アイデアも手間も時間もかかる。人材も足りない。うまくいくわけがないし、行くとも思っていない。だから、貿易赤字をまじめに減らす意図はないし、国内製造業復活もお題目だけだ。自動車産業のように、まだアメリカ国内に一部の海外企業の基盤があれば、その生産を少し増やすことはできるだろうが、しかし、それもほんのわずかだろう。サプライチェーンの再興には時間がかかるし、もはや不可能だからだ。
相互関税がどうなるかわからないのに、投資を実際に行う企業はほどんどなく、様子見だろう。生産も消費も停滞し、投資も起きない。壊滅的だ。ほかの産業では、10年かかっても無理だし、それをやる気もないし、不可能だろう。
赤沢大臣大手柄、90日も待たずトランプ大統領は終わる
トランプ大統領は、目先の手柄、勝利、ディールで相手をやりこめる快楽、それしか求めていない。
しかし、日本との交渉は、赤沢大臣の大手柄で、何も決めずに持ち帰った。そもそも決定権がないし、謙虚な人だから、トランプ大統領の挑発に乗りようがない。日本の総理は決断力がないから、言葉は踊っても、結局、大幅譲歩をトップダウンで決めることもできないから、90日ぎりぎりか、90日ではまとまらないだろう。
しかし、90日も待つ必要はない。アメリカの株式市場や債券市場から攻撃を受け、共和党内の雰囲気も日々変わっていき、日本との交渉であせっているトランプ大統領を観察した欧州は、強気に出てくるだろう。
トランプ大統領はますます焦り、どんどん譲歩してくるか、投げ出すか、やけくそになるか、どれかだろう。日本をはじめ、世界は全員様子見をし、ただ中国だけが、この大チャンスをものにするために、着々と外交を展開していくだろう。
本稿最終校正中に、トランプ大統領がジェローム・パウエルFRB議長を解任しようとしているというニュースが飛び込んできた。
パウエル議長は辞任要求には屈せず、むしろ心理的にはトランプ圧力で利下げ時期を早めたと思われないように行動するバイアスがかかり、利下げをさらに遅らせるだろう。
トランプ大統領は終わりだ。アメリカの終わりは早まる(本編はここで終了です。この後は、競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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