母親と祖母の断捨離攻防を見ている、おばあちゃん子のKuroさんは、ちょっと三重子さん寄り。
「今あるものは、全部きちんと厳選されたものばかり。僕目線でもちゃんと整理されているなと思います。安いからと大量購入したり、無計画に同じようなものばかり買いこんでいたり、そういうものは一切ありません」

大切なもの、必要なものしか家の中にはないと、Kuroさんは言う。孫の言葉に満足げにうなずきながら、三重子さんはため息をつく。「問題は必要なものがありすぎること」。自覚は十分にしているのだ。
確かに、三重子さんの家の中には大量にものがあるし、飾っているものの多い。しかし、不思議と散らかって見えない。片付けの秘訣を聞けば、それは単純明快だった。
「見て楽しくないものは飾らないの。楽しくないものはすべて収納して隠しちゃう」
捨てられない母と捨てさせたい娘。三重子さんはこれまで、「私が亡くなったらなんでも好きにして」と言い続けてきた。
だが、2年前に最愛の夫が認知症を発症して老人ホームに入居してから、いよいよ断捨離も本番かなという予感めいたものが頭のすみっこによぎるようになったという。

親しい人との別れも受け入れられるようになった
90代に入ってから、三重子さんにはさまざまな変化が訪れた。YouTubeをきっかけに本を出版、本作りの過程で今まで出会ったことがない若い人たちとの交流が生まれ、心が弾んだ。
結婚生活66年目にして初めて1人暮らしになった。おしゃべり好きな自分の話をにこにこ笑って聞いてくれる夫がいない。その寂しさに体調を崩してしまった。そして毎日がんばって動いているのに、刻々と体が衰えていく。
「何歳になっても鍛えれば筋肉はつきますって言われたけれど、少なくとも私には無理。もう鍛えようはないの。筋肉がつくまでがんばったら、筋肉がつく前に骨が折れてしまうわよ」と、自虐ネタで笑わせる。

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