日記はもっと深く心に染み入ってくる。思春期から大人へ。妻となり、やがて3人の娘の母となり、嫁として姑に必死で仕えた時代。体力と好奇心に満ち溢れて、やりたいことに片っ端から挑戦した黄金の60代。自分の歩みが、誰の目も意識しない正直な言葉で書き記されている。
ページをめくるごとに、三重子さんは自分が書いた小説を読んでいるような気持ちになるという。日記は今も1日の終わりに欠かさず書いているが、この数年は気になった新聞の切り抜きを貼るだけの日も増えている。
三重子さんはしみじみとつぶやく。
「日記は私にとって、今まで生きてきた人生の証しなんです」
家の中にある、大量の「大切なもの」
しかし――。思い出とともに生きる幸せを大事にしたい一方で、昨今は三重子さんの頭を悩ませる“外圧”も発生している。娘さんたちからの断捨離の要請である。
三重子さんが大切にしている思い出は、前述の日記や手紙だけではない。
刺しゅうや刺し子、人形、陶芸などの作品や、自宅2階をギャラリーにして展示するほどある写真作品の数々。テレビ番組を録画したVHSやラジオ番組のカセットテープ。好きで買い求めた絵画や調度品、小さな飾り物。母親の形見や思い出の品々。何十年分の年賀状。「着る人が着れば、まだまだ着られる」と思う30~40年前のお気に入りの洋服たち。
写真のアルバムも軽く30冊以上はあるほか、孫たちの赤ちゃんの頃からの写真は未整理のまま何箱もの収納箱に眠っている。アルバムに貼るより先に孫たちは成人になってしまった。
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