報告書では、「編成ラインにおける(特権意識に基づく)セクショナリズム、『原局主義』」とあり、独善的に物事を決定する、強い同質性・閉鎖性・硬直性、責任の所在が不明確といった重大な欠陥が指摘されている。
このような分析結果を見て慄然するのは、「無責任の体系」という言葉の生みの親である政治学者の丸山眞男が論じた日本の戦争指導者たちの思考と行動様式に非常によく似ていたからだ。
丸山は、その特徴として「既成事実への屈服」と「権限への逃避」の2つを挙げた(古矢旬編・注『超国家主義の論理と心理 他八篇』岩波文庫)。
政策決定の前提となっている事柄はすべて動かせないものであり、それ自体を改革の対象とするという発想がないことが日本の政策決定における特色であった。その結果、多くの既成事実の積み重ねによって、問題解決に取り組む立場の者はそれに拘束されることになり、危機的な状況を打開する自発性は失われてしまう。
この「既成事実への屈服」を下支えしていたのが「権限への逃避」である。巨大な権力機構の歯車に進んでなることによって、その権力の分け前に与り、内部の力関係に従いながら自己保身に努めるという方向性である。
「原局主義」で独善的な行動様式
報告書の第8章の原因分析には、「CXの経営陣の意思決定の特徴として、外部に助言を仰ごうとせず、『原局主義』で独善的に物事を判断して前に進めてしまう行動様式がある」とあり、過去の事件に関する言及があった。2020年のテラスハウス問題と2023年の旧ジャニーズ事務所問題だ。

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