フジ「中居氏の性加害を"実質放置"」が実に日本企業らしいワケ。調査報告書でも「責任者不在の無責任体制」「原局主義」と批判されているが…

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「この2件の重大な人権問題に対するCXの対応を見ると、やはり『原局主義』で独善的に『自己検証』を済ませて前に進めてしまうという行動様式が表れている。問題を起こした原局から独立したコンプライアンス推進室や取締役会・監査役による『客観的な検証』は行われておらず、その必要性が取締役会・監査役において議論されたこともない」と手厳しく総括している。

今回の人権問題でも同様のスタンスを踏襲したとし、「このような行動様式を繰り返してきたことから、CXは過去に重大な人権問題に直面しても、組織として何も学習することができず、経営陣や取締役会・監査役が人権意識を高めることもできなかった」と述べ、「こうした杜撰な役員指名の背景には、組織の強い同質性・閉鎖性・硬直性と、人材の多様性(ダイバーシティ)の欠如がある」と断じている。

これらの指摘は、このような独善的な体制がまさしく「既成事実」として不動のものであって、改めるという考え自体が生じなかったことを裏付けている。不動のものとされると、当然それ以外の方法が模索されることとなり、弥縫策に終始するしかない。この観点から見れば、「原局主義」から「自己検証」への流れは、ごく自然な成り行きなのだ。

報告書はその企業文化にかなり踏み込んだ記述をしており、年配の男性を中心とする組織運営が「オールドボーイズクラブ」と揶揄(やゆ)されると指摘したうえで、「現場ではセクハラを中心とするハラスメントに寛容な企業体質が形成され、女性の役員や上級管理職への登用が一向に進まず、旧態依然とした昭和的な組織風土がいまだに残存している」と評価した。

権限への逃避で、昭和的な風土を正当化

このような「昭和的な組織風土」を正当化していたのが、権限への逃避である。

権限の出所は、本社社屋オフィスタワーにあるCXの役員フロアを指す「××階」(報告書にはCXの日枝氏、尾上氏、代表取締役会長、代表取締役社長だけが個室を与えられる役員フロアを指す社内用語とある)で、その頂点には日枝氏がいた。

報告書は「取締役会には、錚々たる経歴を誇る7名の社外取締役が就任しているが、いずれも日枝氏の知己として招聘されており、日枝氏の時代を終わらせて次世代に経営をアップデートしようという意欲に乏しかった」などと指弾したほか、役職員に実施したアンケートで、日枝氏の組織への影響を尋ねたところ、過半数が「役員が日枝氏の方ばかり見て行動している」「実力や素養に関係なく日枝氏に気に入られた人物が出世する」と回答した事実を示した。

権限への逃避がいかに日常的なものとして浸透していたかを十分うかがわせるものとなっている。丸山が述べた2つの傾向が見事に継承されている典型例といえるだろう。

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