今後の日本株を「下支えする業種」は何か?日経平均株価の当面の下値メドは3万3000円程度だ

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これがどう株価に影響するかと言えば、やはり個人消費を通じた経路になる。日銀の算出する消費活動指数に目を向けると、物価変動を除いた実質値が横ばいの一方で、株価にとって重要な名目値は値上げによって順調に拡大している。2015年を100とする指数は実質が96、名目が110となっている。インフレが本格化したこの3年で名目値は高い伸びを遂げた形だ。

そうした下でスーパー、百貨店、ドラッグストア、外食などが含まれる小売業の予想EPS(1株当たり利益)は、インバウンドの増加もあって拡大傾向にあり、先行きは1年先がプラス17.1%、2年先がプラス5.8%とそれぞれ順調な拡大が見込まれている。そこに、3年連続の賃上げが消費者を動かせば、このEPSの増加ペースがさらに加速する可能性は十分にある。

2025年の日本株を下支えする業種は?

これまでの日本株は、グローバル企業などと呼ばれる海外市場で成功を収める銘柄が株価指数の牽引役であった。もっとも現在は、自動車や鉄鋼はトランプ相互関税をはじめとするアメリカの通商政策の脅威に晒されており、特に北米で大きく事業展開する企業の業績は不透明感が強い。

また、2024年央までの株価上昇を牽引した半導体株についてはAI(人工知能)に対する過度な期待が剥落する中、半導体市況のピークアウトが広く意識されており、上値が重い。株式市場と関連の深いデータとして経済産業省が公表する「電子部品・デバイス工業」の出荷と在庫に注目すると、1月は出荷が前年比マイナス1.8%と4カ月連続マイナス圏で推移し、在庫は同マイナス7.3%へとマイナス幅が縮小したことから、出荷・在庫バランス(両者の前年比差分から算出)はプラス5.6%ポイントへと低下した。

3カ月平均値でみても下向きの曲線を描きつつあり、半導体などの需給が緩みつつある様子が浮き彫りになっている。全般的に冴えない展開が続いている半導体株は、PER(株価収益率)でみた割高感は薄れたものの、本格的な反発にはもう少し時間を要しそうだ。

そうなると、消去法的に内需株に注目が集まるのではないか。内需株について、中期で金利上昇が追い風となる金融株、採算改善の期待から建設株などが買われているが、個人消費の回復に弾みがつけば、上述の小売りに加えて卸売業やサービス業など広範な業種で業績拡大が期待できる。これまで内需株は脇役の印象が強かったが、2025年度は株価指数の上昇を牽引する存在になるかもしれない。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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