今後の日本株を「下支えする業種」は何か?日経平均株価の当面の下値メドは3万3000円程度だ

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この賃上げについて多くのエコノミストは、人手不足に起因する構造的なもの、すなわち持続性を伴ったものと認識している。

賃上げ実現でも消費性向は低下、若年層ほど将来に慎重

人手不足の根底にある生産年齢人口の減少は不可逆的なものだ。トランプ相互関税による一時的な世界的な景気減速は懸念されるものの、よほど大きなショックが発生し、労働需要が減らない限り、人材獲得競争はますます熾烈化する。最低賃金の連続的な引き上げもあり、賃金上昇が3年という短命に終わる可能性は低い。

もっとも、労働者(消費者)はそう考えていない可能性が高い。そこで内閣府が公表する「消費者態度指数」の構成項目である「収入の増え方」という系列に目を向けると、2024年に約30年ぶりの高い賃上げが実現したにもかかわらず、ほとんど上がってないどころか、むしろ2019年の平均値よりも低い水準にある。

消費者は2023年に始まった賃上げを「偶然」や「幸運」と見なして、将来に対してはまだ懐疑的にみているのだろう。20年以上にわたって賃金が上がらなかった日本において、たった2年くらい賃金が上がっただけでは、「賃金は上がらないもの」という固定観念が崩れないのは、当然といえば当然だろう。

そうした将来に対する慎重な見方は、消費性向の低下(貯蓄率の上昇)を招いている。家計調査ベースの平均消費性向は、低下傾向にある(貯蓄率は上昇)。賃金上昇にもかかわらず、家計が消費を増やしていないため、特に賃金上昇率の高い30歳代以下の若い世帯で、そうした傾向が顕著になっている。将来不安から貯蓄やNISA(少額投資非課税制度)を通じた投資などに資金を振り分けているものと推測される。

だが、筆者は、3年連続の賃上げがそうした消費者の慎重姿勢を崩す可能性に注目している。いくら慎重な消費者といえども、賃上げを3年も経験すれば、賃金上昇の持続性に対して楽観的になり、消費を増やすことも考えられる。

経済学の考え方に従えば、消費者は、一時的な所得増加では、貯蓄を優先し消費を増やさない。だが、遠い将来まで所得増加が続くと考えれば、そこで初めて支出を増やす(恒常所得仮説)。またここ数年の物価高を経験して、「待てば安くなる」というデフレ期に機能した戦法が有効性を失いつつある点も、消費を後押しする可能性があるだろう。

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