いっこうに解消されない「空き家」問題…客観的に"壊せない理由"もあれば、あえて"壊さない理由"もある

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情報技術の進展や公信力のある登記制度を備えている国があることを考えれば、登記を義務化し、公信力のある登記制度とすることが望ましいといえます。

登記制度を補完して真正の所有者がわかる仕組みの整備も考えられますが、相当のコストをかけて登記制度が稼働していることを考えれば公的資金をつかってまでも新たな仕組みを導入することは現実的ではありません。

「放置」することに利益がある場合とは

②第2類型:放置の利益が存在する

権利・義務を行使できる状態において、利益があると判断して空き家とする場合です。

空き家のまま放置することに利益がある例として、住宅用家屋の敷地が固定資産税課税上の「住宅用地」に該当し、課税標準額が6分の1(200㎡を超える場合は超えた部分について3分の1)に減額される制度があります。

解体して更地にすると土地の固定資産税が6倍になる課税制度が空き家の放置を招いています。

その他の例としては、契約更新後の借地権について、借地上の建物が朽廃すると借地の目的が達せられたものとして借地権が消滅することから、借地権を存続させるために空き家を放置するケースがあります。

借地権は対価をともなって売却可能な財産であり、その利益を守るために、空き家を解体しない選択肢が採用されます。

住宅用地の固定資産税の課税標準の特例は、実際に住宅として利用しているものに適用すべきです。外部不経済をもたらしている空き家についてもその適用を認める結果、外部不経済の拡大を助長する悪循環を断つことが必要です。

③第3類型:行動規範の不備

権利・義務を行使できる状況にあり、利益があると積極的な意思決定をしているわけではないにもかかわらず空き家を放置する、"モラトリアム"状態が該当します。

外部不経済が発生し、近隣に迷惑をかけているにもかかわらず管理義務を果たそうとしない行動規範の不備が問題となります。

"モラトリアム"状態になるその他の背景としては、空き家の利活用や処分について体験や知識が不足し、問題の所在や対応方法がわからないことがあります。空き家が放置されることの問題や解決について教育する、相談にのる、代理人等として解決を支援する仕組みが必要となります。

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