「日本人は起業家精神に欠けている」というのはウソだとアメリカ人の知日派ジャーナリストが確信しているワケ

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〈ワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・プログラム〉を創設したアーンスト・アンド・ヤング社の調査によれば、起業家はかなり共通した経験をしていることが確認されている。

起業した人の半分以上が、自分の会社を設立する前に伝統的な会社で働いていた。さらに、大学と卒業後に勤務した伝統的な企業とで得られた経験と知識が、将来の成功に不可欠だとしている。

起業家に共通した「特徴的な性格」

その一方で、誰もが起業家になれるわけではない。研究では、起業家に共通した特徴的な性格があることがわかっている。なかでも重要なのが、自己効力感で、自分の行動によって望む結果を生み出せると信じることだ。この感覚は、ほかの人が障害だと感じることを機会だと捉え、計算されるリスクと失敗を受け入れることで補強される。

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世界各国の起業家は、起業家指向と呼ばれる共通した性格と考え方をもっている傾向がある。社会で高い地位を得る、人生で挑戦をする、自身の能力を向上させる、家族と自分の人生の質を高める、個人所得を増やす、といったことを望む傾向だ。このような傾向に関する研究では、アメリカ人と日本人の起業家は驚くほど性格が似ていることが示されている。

なかには、日本の起業家がほかの国の起業家と同じタイプの性格であったとしても、日本ではほかの国ほど起業家的性格の人がいないのだ、と言いたくなる人もいるかもしれない。

この点はある程度真実だろう。起業家の大半が企業で働いた経験があり、そこでは減点主義のような考え方が深く浸透していて管理職に裁量があまりなかったとしたら、間違いなく影響を受ける。

いずれにせよ、日本のおもな障害は厳格な組織環境にあるのだ。その環境では、起業家精神を発揮してみようと思わせるような要素があまりなく、ほかのどんな国と比べても、成功に対する報酬が少なく失敗に対する罰則が厳しい。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

リチャード・カッツ(Richard Katz)/東洋経済 特約記者。 カーネギー国際問題倫理評議会の元シニアフェロー。日本に関する月刊ニューズレター「The Oriental Economist Report」を20年にわたり発行、現在はブログ「Japan Economy Watch」を運営。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『「失われた30年」に誰がした』『腐りゆく日本というシステム』『不死鳥の日本経済』

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