「日本人は起業家精神に欠けている」というのはウソだとアメリカ人の知日派ジャーナリストが確信しているワケ

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したがって、最大の違いは、起業家になろうと望むかどうかという点ではなく、日本の状況を考えて慎重になっているという点にあるのだ。文化に深く根ざした気質を変えるのは難しいが、リスク・リワード・レシオ(損益比率)が厳しいという環境を修正することはずっとたやすい。

よく言われる日本人の同調志向を象徴するのが、大学新卒者が男性も女性も同じ黒のスーツに白のシャツかブラウスで有名企業の入社式に臨んでいる写真だ。その写真を見ると、ずっとこうだったのだと思われるだろう。

「リクルートスーツ」が普及したのはここ20年

しかし、早稲田大学で起業を教える瀧口匡は、これはかなり最近になってからの現象だとする新聞記事を私に見せてくれた。2010年の日経新聞の記事に、対照的な2枚の写真が掲載されていた。

どちらも日本航空の入社式の写真で、1枚は1986年、もう1枚は2010年のものだ。1986年の写真では、女性は落ち着いたスタイルではあるものの、それぞれ違った服装をしている。ほかの国でも見られるとおりだ。2010年の写真では「ユニフォーム」を着ていた。

日経新聞は、この変化を採用削減の産物だとしている。ここまでの失われた20年でいわゆる「就職氷河期」に入り、新卒予定者はよい仕事を得ようと必死になって、指南書を読みはじめる。

そうした本ではいずれも、黒のスーツに中は白という「ユニフォーム」を推奨していた。日本では1990年以降、冒険的な青年が一部に出てきた一方で、多くの人がますます慎重になっているが、それがこんなところにも表れている。

同調主義だと解釈される行動パターンがまったく別のものであることはしばしばある。その点について、心理学の教授だった山岸俊男は、さまざまなバリエーションで行なわれた有名な「赤いペン」の実験から実証している。

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